Episode129 ページ30
Aside
船の中が落ち着かなくて、少し歩いた。すると迅さんと東さんの姿が見えて、私はそちらに寄ろうとした。
「迅さ……」
「なぜ、遠征を中止しなかったんだ？」
「んー。まあ、失うものよりもきっと、得るものの方が大きいですから」
その会話に、ピタリと足を止めた。今回の遠征にリスクがあるということは訊いていたが、そこまでの、遠征の中止すら視野に入れるほどのことだったのか……？
「この遠征は、これからのボーダーの未来に繋がるよ」
東さんが黙って迅さんを見つめた。
「……一体、何が起こるって言うんだ」
「それは流石におれにも」
未来は分岐していて不確定だから、と迅さんが加える。どうやら彼にはいくつもの可能性が見えているらしいが、その表情は笑顔の割には影を纏いすぎていた。
「分岐する未来の話をしてもきりがないですしね」
へらっと迅さんが笑う。その表情に東さんは困ったように黙って、「それもそうだな」とワンテンポ置いてから呟いた。迅さんのあの表情は、何かの魔法だ。ああやって笑うと、みんなそれ以上踏み込めなくなる。もちろん私も。優しく壁を作られたような、一線を引かれたような、そんな感覚になる。
「じゃ、おれはこの辺で」
東さんに別れを告げて迅さんがこちらに歩いてくる。あ、見つかっ……
「あれ、Aちゃん」
私の姿を確認した迅さんは、「もしかしてさっきの話訊いてた？」と彼は問う。私に訊かれてまずそうな顔はしていなかったが、私に彼の真意を読むことなどできなかった。
「……何が起こるんですか」
「あちゃー読み逃したなー」
「答えてくれないんですか」
問い詰めると、今度は困ったように笑ってしまった。この人はこうやって色んな人に干渉させないで、一人でやり過ごして来たのだろうか。迅さんの目は私を捉えているはずなのに、何故かちっとも目の前の彼と目が合っている気にはなれなかった。
「Aちゃん」
「はい」
「おれのこと、嫌いになってもいいよ」
「え、わっ、」
発言の意味がわからなくて訊き返そうとすると、迅さんは私の頭を撫でて去っていってしまった。
「ーーずるいよ、迅さん」
いつも、彼はああやって言うだけ言って私を黙らせるのだ。何も教えてはくれないし、まあ訊いた所で私が力になれることは何も無いのだけれど。
「嫌いになんか、なれない」
何となく、何があっても迅さんのことだけは嫌いになれないような気がしていた。
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(；▽；)更新頑張ります！ (2019年1月21日 19時) (
レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる！！！面白すぎてヤバイです！！更新頑張ってください！応援してます！！！！ (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO，loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(；ω；) できる限り定期的に更新していきたいと思います！ (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ！ いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ！ これからも頑張ってください！( v^-゜)♪更新お待ちしています！ 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます！！( ；∀；)がんばります！！ (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2018年10月8日 12時
