Episode120 ページ21
.
「てか何か食べようと思ってたのに喋ってたら買うの忘れてた」
買ってこよ、と私は付け足して立ち上がる。同期と一緒にいるとき、私たちは本当にただの中学生だなと不意に思った。
こんな未来もあったのか、なんて。
そう思ったけれど、私はボーダーに入らなかった未来なんて知りたくもない。それくらいボーダーは私の全てで、大好きな居場所だから。
「亜桜ちゃんアタシもいく〜〜！」
「うん！」
そして、私は宇佐美ちゃんと共に席を離れた。
―――三輪side―――
「栞と亜桜仲良くなったよなー」
陽介が、去っていく二人の背中を眺めながら呟く。
「宇佐美に猫被ってた頃のA面白すぎたよな」
「そうなのか？」
「奈良坂のときよりひどかったなあれは」
「女子の方がひどくなるらしいぜ」
「普通逆だろってな」
出水もちらりと亜桜の背中を見て頬杖をついた。奈良坂が尋ねると今度は陽介がケラケラ笑いながら答える。亜桜は、宇佐美にもどうせ盛大に性格詐欺をしていたのだろう、奈良坂の時もそうだった。
「遠征でネイバーにまで猫被り出したらどーするよ」
「うわそれ最高かよ」
遠征の話を軽くできるこいつらには、それを許容できる程の絆があるのだろうなと見ていて思う。二人ともあまり物事を深く考えていないように見えて、何となく相手の許容範囲を理解した上で会話を構成しているようなニュアンスを感じる。俺と話しているときも、俺の許容範囲を超えてくるような言動は一度もされたことがない。
「遠征、怖くないのか」
俺は、二人の明るいムードを壊すように言ってしまった。そんなつもりはなかったが、どうしてもこの言葉が出てきてしまう。ネイバーは、俺にとっては憎むべき相手で、倒すべき敵。そいつらの住まう世界に足を踏み入れたらどうするか……など、もはや想像もできないくらいに、憎しみが勝ってしまう。だからこそ、俺とは違う物差しで物事を測っている二人に、訊いてみたかった。
「……そりゃ死ぬかもって訊いたらこえーよ。けど太刀川さんいるし、目的もあるしな」
「それはお前の目的じゃないだろう」
「あいつの目的は、おれの目的だ」
目的、それは亜桜の親友を連れて帰ること。間違いなくそれは亜桜個人の目的で、でも亜桜の目的は自分の目的だ、と出水は言うのだ。それは紛れもなく本心を述べている顔で、言いながらふと亜桜の背中を眺めた出水の顔を見て、その覚悟と内から滲み出る感情に気がついた気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 371人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(；▽；)更新頑張ります！ (2019年1月21日 19時) (
レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる！！！面白すぎてヤバイです！！更新頑張ってください！応援してます！！！！ (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO，loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(；ω；) できる限り定期的に更新していきたいと思います！ (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ！ いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ！ これからも頑張ってください！( v^-゜)♪更新お待ちしています！ 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます！！( ；∀；)がんばります！！ (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜桜 | 作成日時：2018年10月8日 12時
