Episode008 ページ9
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「……ボーダー」
しゃがんで、地面に落ちている壊れたガレキに触れてみる。ふう、とため息をついた。もう既に、ボーダーとなって戦っている人間がいる。またあの大規模侵攻のような悲劇が起こらないように、日々訓練している人がいる。それに比べて私は、こんな所で、誰かが戦ったあとの瓦礫に触れることしかできない。無力で小さい存在だ。
「帰ろ、こんな事しても入隊できる訳じゃないし」
やはりダメだと思い、私はここを出ようと立ち上がり体の向きを変える。とても情けない気持ちになり、ボーダー隊員と自分の差を痛感して、やっぱり諦めてただの中学生のままでいよう……そう思いそうになっていたときだった。
ブゥーン、ブゥーン
『ゲート発生ゲート発生』
頭にその音がリピートする。まずい、まずった、ネイバーだ……!
「っやらかした」
ここはそもそも立ち入り禁止。呑気に助けてくださいなんて言えるわけがなかった。急いで警戒区域から出ようとすると、目の前に真っ黒なゲートが現れる。ゲートってこんな、球体なのか……
「グワァアア」
そして中から現れた大型のネイバーが私の上に暗い影を作った。このままでは、殺されてしまう。私、本当に何をやって……!
「どいてろ」
『少し離れてくれ』
背後からの声に、大規模侵攻のときの記憶が甦る。くそ、私はまたボーダーに助けられて……。情けない気持ちを心底味わわされているうちに、その人があっさりネイバーを倒して私を見た。
「おい、お前なんでここに居る?」
「……ごめんなさい」
ボーダーは、はあとため息をついて「もう来るなよ」と私に言った。私はただ申し訳なくて、いつものように猫を被るのも忘れて、ただそのボーダーに謝罪していた。今回は完全に私が悪いし、落ち度しかない。
「はい……あ、あの……」
うつむいていた私は、その人の手に握られているものを見て顔を上げる。
「それ……見せてくれませんか……?」
「トリガーか?」
その人はトリガーと呼ぶ光の剣を差し出してくれた。私はゆっくり受け取り、その重みに意外性を感じる。ボーダーは結構みんなこれを持っているということは、いつも視えるから知っているのだ。
「トリガー……」
ぼそっと声が溢れる。
ブゥーン、ブゥーン
しかしその時突然空に、しかも私の背後にゲートが開いてしまった。
「多いな。おい弧月を……」
「うわっ!?」
すぐにゲートから出てきた、さっきよりも小さなネイバー。気付けば、私はそいつの体にトリガーを突き刺していた。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時