検索窓
今日:42 hit、昨日:23 hit、合計:478,672 hit

Episode008 ページ9

.


「……ボーダー」


しゃがんで、地面に落ちている壊れたガレキに触れてみる。ふう、とため息をついた。もう既に、ボーダーとなって戦っている人間がいる。またあの大規模侵攻のような悲劇が起こらないように、日々訓練している人がいる。それに比べて私は、こんな所で、誰かが戦ったあとの瓦礫に触れることしかできない。無力で小さい存在だ。


「帰ろ、こんな事しても入隊できる訳じゃないし」


やはりダメだと思い、私はここを出ようと立ち上がり体の向きを変える。とても情けない気持ちになり、ボーダー隊員と自分の差を痛感して、やっぱり諦めてただの中学生のままでいよう……そう思いそうになっていたときだった。


ブゥーン、ブゥーン


『ゲート発生ゲート発生』


頭にその音がリピートする。まずい、まずった、ネイバーだ……!


「っやらかした」


ここはそもそも立ち入り禁止。呑気に助けてくださいなんて言えるわけがなかった。急いで警戒区域から出ようとすると、目の前に真っ黒なゲートが現れる。ゲートってこんな、球体なのか……


「グワァアア」


そして中から現れた大型のネイバーが私の上に暗い影を作った。このままでは、殺されてしまう。私、本当に何をやって……!


「どいてろ」
『少し離れてくれ』


背後からの声に、大規模侵攻のときの記憶が甦る。くそ、私はまたボーダーに助けられて……。情けない気持ちを心底味わわされているうちに、その人があっさりネイバーを倒して私を見た。


「おい、お前なんでここに居る?」
「……ごめんなさい」


ボーダーは、はあとため息をついて「もう来るなよ」と私に言った。私はただ申し訳なくて、いつものように猫を被るのも忘れて、ただそのボーダーに謝罪していた。今回は完全に私が悪いし、落ち度しかない。


「はい……あ、あの……」


うつむいていた私は、その人の手に握られているものを見て顔を上げる。


「それ……見せてくれませんか……?」
「トリガーか?」


その人はトリガーと呼ぶ光の剣を差し出してくれた。私はゆっくり受け取り、その重みに意外性を感じる。ボーダーは結構みんなこれを持っているということは、いつも視えるから知っているのだ。


「トリガー……」


ぼそっと声が溢れる。


ブゥーン、ブゥーン


しかしその時突然空に、しかも私の背後にゲートが開いてしまった。


「多いな。おい弧月を……」
「うわっ!?」


すぐにゲートから出てきた、さっきよりも小さなネイバー。気付けば、私はそいつの体にトリガーを突き刺していた。

Episode009→←Episode007



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (182 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
524人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。