Episode012 ページ13
太刀川side
昨日会ったばかりの女子中学生は、俺の前でその内に抱える思いをのべていた。
「で、納得してもらえなくて。やっぱり、勉強できなくなるんですか？」
ふーん……。なんだ、こいつ入隊希望者だったのか。どうボーダーに興味を抱かせようかと、構えて損をした。注文していたパンケーキとコーヒーがテーブルに並び、いかにも甘そうなパンケーキを頬張った亜桜Aが、俺の顔を見上げてそう問うてくる。
「うーん……ってお前、その組み合わせはどうかと思うぞ」
「えー何ですか、おいしいのに」
俺はそいつがトッピングしたパンケーキを見て思わず話を逸らしてしまった。そいつのパンケーキは味が濃くて甘いものばかりで、俺が食べたら気持ち悪くなりそうだったからだ。こいつの味覚は一体どうなっているのだ……
「……まあ、おれは単位危ないが、別にボーダーに入ったからそうなったわけじゃあないな」
「え、単位危ないんですか？」
俺が注文していたコーヒーを一口飲んで亜桜に目をやると、もうそのパンケーキは無くなっていた(食べるの早くないか、と思ったのは自然なことだろう)。続いて出た質問は軽く無視して、俺の頭はそんなことよりもどうやったらこいつを入隊させられるかを考えていた。本人が入隊希望である以上、このチャンスを掴まないわけには行かない。
「よし、今から行くぞ。お前ん家」
「っは？」
「お前の母親、納得させに行くんだよ」
「今から！？」
「思い立ったらすぐ行動するタイプなんでな」
しかし、俺にはごちゃごちゃ考えるのは向いていない。そんなことよりこいつの母親を納得させに行った方が、手っ取り早くて良いだろう。
「雨止まないですね」
「あ、そうかお前傘ないんだったな」
会計を済ませて、店の外へ出る。俺は持ってきたビニール傘をパンっと開いて、一歩雨空の下へ足を踏み出した。ぐい、と亜桜を傘の中に引き込んで、ポケットに片手を突っ込む。
「あの……ほんとありがとうございます」
引き入れたそいつは、俺を見上げてくしゃっと笑顔を向けた。どうやら、思っていたよりよっぽどボーダーに入隊したいらしい。
「ん、気にすんな」
こんなに使えそうで入隊したい気持ちが誰よりも強いやつを、親の判断で潰すわけにはいかない。こいつ自身のためにも、三門を守るためにも……もちろん俺個人のためにも。頭の中でどう親を説得させるか考えながら、もう真っ暗になった空の下を歩いて進んだ。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます！固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜！ (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります！！ (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです！続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます！！わがままな作者で申し訳ないです（汗）必ず戻ってきます…！ (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2015年8月5日 16時
