Episode010 ページ11
Aside
「起立、礼」
結局あのボーダーとの出会いによって、諦めかけたボーダー入隊の夢をやはり追い続けることにした。しかし今日も親に反対され、入隊はまだできそうにない。私は号令を済ませ、鞄を手にとった。
「亜桜ー、オレ今日居残りなんだわ、先帰ってて」
「はあ、なんで？」
「数学の課題家に忘れたからやり直し」
向こうの席から、米屋が私を呼びながら駆けてきて、私も少しそっちに寄る。返ってきた言葉を訊いて、確かに数学の課題は今日が提出だったことを思い出した。先生はケチなので、取りに帰らせずにその場でやらせそうであった。米屋のセリフを訊いて、昨日の晩に気付いて急ピッチで課題を終わらせた自分を心底褒め称える。
「どんまい、じゃあね」
「おー」
米屋に軽く手を振って、教室を後にする。
「ん、雨の嗅い」
階段を降りていると、それを感じた。結構ハッキリ感じたしこの分だともう降っているだろう。ああ、傘を持ってくるのを忘れたことを思い出してしまった。下駄箱で上靴からスニーカーに履き替え空を見てみると、案の定外は雨が降っていた。仕方がないので、走って帰る。
「ん？」
いざ門に走り出したとき、見た事があるような無いような人影が、校門に立っている姿が目に映った。だけど構っている余裕もないほど雨が降り続いているので、無視しようとまた私は走り出す。
「あ、お前だ」
「あっ、昨日の！」
「お、覚えてたか。お前名前は？」
しかしその考えも虚しく、そのビニール傘の人物に私は声をかけられた。ああ何だ、見た事がある人だ。その人と会話し始めると、米屋と話していた時より声のトーンが高くなった。しかし内心は、傘がないから早く帰らせてくれ、といったところ。そろそろ肌寒い季節だし、風邪を引きたくはない。そう、声をかけてきたのは、昨日警戒区域内で私を助けてくれたボーダーだ。制服を着ているので学生だろう。年上だろうし、他校の先輩だろうか。それとも高校生？
「亜桜です。亜桜A」
「亜桜な。俺は太刀川慶だ」
その太刀川慶という名前が私の人生を大きく変えることになるだなんて、このときの私は知る由もなかった。
「これからちょっと時間あるか？」
突然の誘いに、私は「え、」とただ一音。
「いや、あの、ご覧の通り傘無いんですけども」
「じゃあ傘貸してやるからちょっと付き合え」
「はい？」
驚いて声のトーンを調節するのを忘れてしまった。しかしそう言って太刀川さんは、私をそのビニール傘の中に強引に引き込んで、そのまま歩きだしてしまう。何だ……この人。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます！固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜！ (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります！！ (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです！続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます！！わがままな作者で申し訳ないです（汗）必ず戻ってきます…！ (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2015年8月5日 16時
