【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ44)

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◇ Like a little rain. (kn) ページ44

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私がメイクをしなくてもあなたは「可愛い」と言ってくれるし、私が変なこと言ってもあなたは「面白い」って言ってくれる。

そして私が「きらい」と言っても、あなたは「愛してる」と言ってくれるの。

だからこれまでうまくやって来られたし、これからもずっと、あなたとならやっていけるんだと思う。

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　Like a little rain.
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雨は好き。それはきんときが告白してくれた日の天気。そしてAがきんときを受け入れた日の天気。

「僕と付き合ってください」

受験を控えた高校2年生の夏の終わり。緊張しすぎて自分の事を「僕」と言った、同じクラスの仲の良い友達。

……片想いだと思っていた。でも夢じゃない。果てない憧れはこの雨のように胸に降り注ぎ、傘を打つ雨音は、いつしか心臓の音に紛れていく。

『私もきんとき君のことが好き』

はい、と答えるのも忘れて「好き」という気持ちの言葉だけを打ち返してしまったのは、ご愛嬌。
良好な友達関係を壊すのが怖くて足踏みしていたのが、こんな形で、……好きな人から告白される形で叶うなんて、思ってもいなかったのだから。

雨は好き。だって君の事が好きだから。
雨は好き。だって、あなたの事が好きだから。

***

「う〜ん、今年も雨だねぇ」

付き合って7回目の記念日。
きんときとAが付き合い始めた記念日の天気はいつも雨。それは夏の忘れ物の積乱雲だったり、はたまた少し早い秋雨だったり。台風がバチこり当たった日もあった。

考えてみれば、もう人生の1/3は一緒に過ごしている。多少の浮き沈みはあったけど、高校2年から社会人2年目までの7年間を、何事もなく付き合って来られた。
それもこれも「きんときのおかげだ」とAは思うし、「Aのおかげだ」ときんときは思う。

「おいで、A」

窓際でカーテンを寄せて外を眺めていたきんときが、Aを手招きする。
お招きされるままAがきんときの横へ立てば、2人の腕は自然とお互いの体に巻きついて引き寄せあった。