【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ45)

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「今日どうしよっか」

『お出かけでもいいし、家にいるでもいいよ』

「Aは雨好き？」

『好き。きんときと家でゴロゴロできる言い訳になるし』

「コラコラ」

そんな悪い子を諫めるような口ぶりをしながら、きんときは隠しきれない笑みに弧を描く唇をAに寄せた。
ちゅっ、ちゅっと短く柔らかいいたずらめいたキスが、頬や鼻先、Aの瞼をふちどるまつ毛に触れる。

雨のように優しく触れるきんときの指が頬骨を撫で、首筋を辿り、鎖骨から胸の丘陵へと滑り落ちていけば、それを追うようにきんときの唇も首筋から鎖骨へと下って行く。

いつしか冷たい窓に追いやられ、窓ガラスに打ち付ける雨を薄いレースカーテン越しの背中へ感じながら、少しずつはだけていく素膚に降り注ぐ口付けの雨に、ゆっくりと目を開ける。

「ねぇA」

すると目が合うのを待っていたかのように、きんときが覗き込んできた。

「俺と結婚してください」

受験を控えた高校2年生の夏の終わりにされた告白。あのとき緊張しすぎて自分の事を「僕」と言ったきんときのプロポーズは、いつも通り「俺」って言った。

それはたぶん、あの時とは違って、私の答えを知っていたから。

『……はい』

雨は好き。雨のように優しく触れてくれる、あなたの事が好き。

　Like a little rain.
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「ふふ、午後は指輪買いに行こっか」

『午前中は？』

「さっきの続き。……Aが誘ったんだよ？責任取ろうね」

『えっ……？！』

「ねぇA、俺も責任取るからさ、」

その言葉の続きは耳元でコソコソと耳打ちされた。

雨足よりも早くなった鼓動は、きっと首に触れた手から伝わっている。

期待と不安と、“初めての試み”に打ち震えた、雨音よりも小さな声で。Aは「いいよ」と答えた。