【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ41)

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誤魔化すように急須を碗に傾ければ、すっかり冷めたお茶がほんの少し滴るだけで、中身は飲み尽くしてしまっていた。

時計は乗ろうと思っていたバスの時間を大幅に過ぎていて、すっかり傾いた陽がオレンジ色に染める店内を、店員さんが片付けに歩き回っている。

『そろそろお暇しようかな。ありがとうNakamuさん、お話しに付き合ってくれて』

ポシェットのベルトを肩に掛け、伝票を持って立ち上がれば、Nakamuも慌ててお茶を一気に煽り、伝票を持って立ち上がった。

nk「あ、待って、もしかして駅の方行く？良かったら一緒に行かない？」

『ふふ、残念だな。私のホテルは駅と反対側なの。……じゃあ、さようなら』

惜しい気持ちはあった。でも、ワンナイトをする元気も、恋愛をする余裕も、私には無かった。

……理想の相手ほど、あなたを傷付ける。事実、私は傷付いた。元彼が理想の相手だったかは、もうわからないけれど。

nk「そっか、……ねえ、どうしたらまた君に会えるかな」

『私に？』

nk「うん。知りたくてさ。……巡り会えた理想の相手って人が、本当に俺を傷付けるのか」

全てはほんのちょっとずつの、予定の狂い。

nk「それに教えてあげたいんだ。君の理想の人は君の心を傷付けたかもしれないけど、

　……運命の人なら、きっとAさんを幸せにしてあげられるよって」

ドン底の中で引き当てたものが“Nakamuとの出会い”だったのなら、私は、この恋に溺れたいと思ってしまった。

missing puzzle
( I finally found you )