【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ24)

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廊下の奥からは、「はやく教室戻れー」と廊下に残る生徒たちを追い払う5時間目の先生が向かって来ている。

きりやんは気まずそうにBroooockとシャークんを交互に見合ったが、すぐに諦めて誤魔化すように咳払いをした。

kr「じゃ、俺はこれで」

『うん、またね。シャークんもありがとう』

sh「えっ ……うん。あ、やべぇ次理科室だわ。じゃあな」

僕と目も合わせず逃げるように去っていくシャークんと、気まずそうに先に行っちゃったきりやんと、そんな2人にニコニコ笑って手を振るAの横顔。

─── Aちゃんの感覚とか分からんけど、本気で付き合いたいなら一回区切った方が良いんじゃねーの。

Nakamuからのお説教、もしかしてちゃんと聞いた方が良かったのかな。

『Broooock、教室戻ろ？』

A、Aは鈍感さんかな？
僕、いますっごく傷ついてんだけど。

『……Broooock？』

口元だけ笑って固まってるBroooockに、Aが小首を傾げて見上げる。

br「なんでもないよ、早く戻ろ」

Broooockは、いつものように笑ってあげる事しかできなかった。

教室に戻ってすぐ、シャークんからのメッセージがいっこだけスマホを鳴らす。

“ごかい”

先生に見つからないよう、急いで打ったのだろう。余程焦ってたのか、やましい気持ちがあったのかは知らない。

僕、別にシャケさんに怒ってるわけじゃないよ。あとで話しは聞くけどね。

ただね、Aは、普通に僕以外の男の手を握れるんだなって、そっちがショックだったんだ。

午後の授業は苦手科目ばっかで、Aと同じクラスでいるために成績をキープしなきゃいけないのに。本当は集中しなきゃいけないのに。でも、今日はAの後ろ姿ばかり眺めちゃった。

***

br「A、一緒に帰ろ？」

『うん、いいよ』

Aはちょっとだけ「アレ？」って顔をした。
それはたぶん僕が、いつもよりドライだから。

教室を出るとき、廊下でシャークんが待ってたけど、僕がAを連れてるのを見るなりきりやんのいる隣のクラスの方に行っちゃった。
わざわざ謝りにくるなんて、あの時の僕ってそんなに怖い顔してたのかな。

『あれ、いまシャークんいなかった？』

br「えー、うん。きりやんのクラス行ったんじゃないかなぁ」

もやもやと、イライラ。
好きな女のコに、そんな気持ちだめだよね。わかってるけど、今日の僕は調子が悪いみたい。