【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ37)

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次の日、Aは講義を全部休んだ。

彼氏とやっと別れたなって察しはしたけど、あえて連絡しなかった。

……いや、嘘。本当は彼氏とヨリを戻して、彼氏に会うために日帰りで地元に帰ったんじゃないかって不安で連絡できなかっただけ。

もう講義の内容とか覚えてないし、ノートも取れなかった。

AもAだけど、俺も俺だなってトコ。
事実俺はAにいい顔しながら、Aが自分から別れるように仕向けたようなものだ。とどのつまり、Aにとって俺は天使でもあり悪魔でもあったわけ。

1ヶ月くらいに感じるほどの長い長い1日の終わりに、俺の体内時計を正常に目覚めさせるメッセージの受信音が鳴った。

Aからの連絡にいち早く気付きたくて、マナーモードを切ってAからの着信だけ音を変えて設定してたんだ。俺の方が重症かも。

それほど待ち続けたAからのメッセージはたった一言。

“別れちゃった”

これまでの人生で2番目に欲っしてた言葉を、俺は手に入れた。次は決まっている。

Aの口から、1番欲しい言葉を引き出すだけ。

俺はすぐに返事をしないで、既読だけ付けて5分くらい待ったあとに返事をした。

“飲みにでも行く？”

***

『もういい！早く吹っ切る。ずっと前から終わってたわ、もう。いいや、ここで番号もラインもブロックしてやる』

kr「おーやれやれ。ついでにカメラロールの整理もしちゃえ〜」

Aは初っ端からテキーラのショットを入れて号泣したあと、スマホを出して“元”彼氏をデータから追い出し始めた。

『……ありがとね、きりやん。本当は気付いてたよ、きりやんが私と一緒に彼氏のこと肯定してくれたのって、遠回しに別れろって言ってたんでしょ？』

kr「へっ？」

思わずドキッとして、グラスの中の炭酸の泡が一斉に水面を叩く。

『だってきりやんが指摘する所は全部私と彼氏の歪なトコでさ、全部気付かされるきっかけだったもん。……きりやんって、優しく色々聞いてくれてたけど、本当は悪魔だったんだね』

そう笑うAを潰す気は無かったけど。正常な判断が無くなるくらいにはお酒を入れてみようと思った俺は、ロングアイランドアイスティーだの、ショットガンだのをAに飲ませたあと、女の子らしく可愛い見た目のマイタイを入れた。反省はしてない。

当たり前だけどAは酔い潰れて、最低だろうけど俺は笑顔で持ち帰らせてもらった。

……いや、何もしてないよ？？？