毒の華をも食らう ページ12
.
「A」
そう呼ばれ振り返れば彼女が憧れる真木がいた。艶やかな黒髪が揺れ、彼女は思わず固まったがすぐに動き出し真木の元に駆け寄る。真木はそれをいい子だと目を細め彼女の頭に手をやった。
「この間ぶりだね」
「まきさん!こんにちは!」
「うん、挨拶ができていい子だね」
真木にそう微笑まれ彼女は胸が高鳴る。真木はそんな彼女を見てさらに笑った。
彼女の憧れる真木は1つ上の学年とは思えないくらい大人っぽく、諏訪や冬島といった大の大人ですら頭が上がらないことが多い。貫禄のある美人。彼女とは真反対の真木に憧れるのは致し方ないことだった。
「いつも周りに人がいるのに珍しい」
「今はお使い中で、その、冬島隊に」
「へぇ」
「当真先輩に頼まれて」
「へぇ……」
真木と話せて嬉しさで声の弾む彼女とは反対に、真木は話す内容に笑みを深くする。影が落ち真木は静かに後で説教でもするかと考えながら、彼女に目線を合わせるように少し屈む。
「いいか?それはパシリだ。おまえはそんなパシリ受ける必要ない。必要ならアイツに自分で来いって言うんだ、私がそう言ってたって言いなね」
「は、はい……」
「いい子だ」
真木も彼女の従順で素直な態度がとても気に入っていた。それこそ彼女を見かければ話しかけたし、餌付けとばかりによく飴を渡していた。それを見た出水や米屋からは女王と飼い犬と言われていたが、それに圧をかけることをせず真木は彼女との交流をそれなりに楽しんでいた。
頷く彼女の頭を再度撫でていれば新しい声がして彼女と真木は声を辿ると、県外スカウトから帰ってきた草壁がいた。
「お久しぶりです真木先輩、小鍛冶先輩」
「おつかれ」
「く、草壁さん……!県外スカウトお疲れ様です……!」
草壁を前にしてまたも彼女の声色は高くなる。
彼女は精神面で強く生きる女性が憧れの対象そのものであった。オペレーターでありながら強く生きる真木や草壁のことを心底憧れている。だから年下であろうと草壁のことはさん付けをしていた。
草壁は満足気な笑みを浮かべると「先輩は私たちの事好きですね」とそう言う。
「エッ?!そ、そうです……とても憧れてます……2人のこととても、憧れてます……」
真木の草壁はその言葉を聞き、顔を合わせると満足気に再度笑った。
.
1220人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月26日 0時