やさしい地獄 ページ5
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結果として、迅たちの勝利を収めてブラックトリガー争奪戦は幕を閉じた。
迅の指示通り三輪隊狙撃手2人の撃退を遂行したAは、当真に脳天をぶち抜かれてベイルアウト。
ボスン、とベイルアウト用マットに着地した体を素早く起こすと、同じ隊のオペレーター国近に「おかえり〜Aちゃん」と声をかけられた。修羅場の中顔を合わせた太刀川と出水とは違い、まともに同じ隊の人間と顔を合わせられた喜びと、このあとのことを考たときの恐怖で半泣きになりながら「ただいま」と返事したのだった。
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ベイルアウトしてきた太刀川はAの顔を見ると、何食わぬ顔で「ただいま」と言った。
絶対に怒られると腹を括っていたものだから呆気に取られていると、同じく出水もベイルアウトして戻ってくる。
「なんだ出水もやられたのか?」
「いやいやおれはやられてないですよ、自発自発」
「ほら小鍛冶、出水も帰ってきたぞ」
「小鍛冶ただいま〜いい子で待っててえらいなぁ」
「私も私も!ただいまAちゃん」
「お、おがえりなざぃ……」
誰も怒る様子もなく、Aは混乱した。それどころかつい先程まで隊長の太刀川の方でなく迅の方についた(これに関しては本部長命令で仕方なかった)自分のことを、出水はワシャワシャと頭を撫でて褒めるのだ。太刀川も国近もそうだ。
予想外の優しさに触れ半泣きだったAが泣き出すのは目に見えていたようで、出水はこうなることがわかっていたようにローテーブルに置かれていたティッシュ箱を掴みAに渡した。
「大丈夫だって、おれらホントに怒ってねーから」
「そうそう。むしろ太刀川さんAちゃんに会いたがって落としに行こうとしてたもんねぇ」
「小鍛冶は敵にいたら先に落としに行きたくなるタイプだろ」
腕を組んで楽しそうに笑う太刀川は出水にかき回されてすでにぐしゃぐしゃになってるAの頭をさらに撫で回した。
そんなボサボサになっているAの髪を手ぐしで優しくとかしながら国近は「そういえば太刀川さん報告は〜?」と言えば、太刀川は忘れていたのか慌ただしく隊室を飛び出していった。
「よしよし、太刀川さん帰ってきたらごはん奢ってもらおうねぇ」
「ゔん゛」
「ははっ、小鍛冶泣いてんの久しぶりに見たなぁ」
「こわかった?」
「めぢゃぐぢゃごわがっだ」
「よしよし」
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作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年12月3日 0時