歪【ワールドトリガー】 (ページ6)

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「明日の会議で処分が決定する」

うっすらと浮かび上がったのは驚きの表情。
開発室長の話では弁明もなく除籍を望んでいたらしいので辻褄は合う。

さらに説明を求める目は何か思案げだ。おそらく何か勘づいているに違いない。

もう後戻りはできないぞ、と忍田はその瞳を見つめる。

「お前が最上宗一の弟子だからだ」

口にしてから、怒るだろうと思った。ここまでの情報で、彼女の憶測は証明されるだろう。

「あいつに、何をさせようとしているんです」

後悔しているうちに返ってきたのは案外静かな、しかしこれまでとは違う色味の声だった。
高揚を伏流させた声でAは静かに続ける。

「風刃は彼のSEのためにできた」

それにはわざと言及せず、忍田は席を立った。

わかっていたように再びAは目を逸らした。

「....明日の会議には出席を」

「承知しました」

引き戸の側に控えていた救護隊員と入れ替わるように部屋を出る。

深いため息が、青緑の非常灯だけが灯る暗い廊下に溶けた。

なぜ彼女の処分決定が長引くのか、なぜ帰還が秘匿されているのか。

全ては件のブラックトリガーの出現、玉狛と本部の対立関係という彼女の全く預かり知らないところで起こっていることに起因するばかり。

しかし彼女そのものが、またそのSEが迅悠一の弱点となるからには城戸派が彼女を手放す気はないに違いない。

開発室長も同意見だ。

おそらく我々忍田派と玉狛を丸め込むために除籍を拒否する言質を取ろうとし、失敗した。

そして私が彼女を焚き付けた今、事はどう運ぶのか。

彼女の帰還が彼によって導かれた最適解なら、利用も悪用も算段に組み込まれているのだろう？

方向のない問いが、半分願いのように頭を巡っていた。