似た者同士 ページ20
その夜は提出期限に迫るレポートが重積していたはずだった。
「模擬戦しよ」
彼女が部屋を訪れたのは正子0時に迫る頃。
「単位」
差し出した手に渡されたのは小さな記録媒体。
「まじか」
「戦闘狂のくせに」
私と戦うのは怖い？と問われて、太刀川は笑った。
当たり前ながら誰もいない深夜のブースに二人。
Aはポケットから二つのトリガーを取り出した。
「はあ、なるほど」
「わざわざ私を拾ってきて、この
「さっすが兄弟弟子、似てるな」
「どっちがいい？」
「そっち」
風刃が起動する、その瞬間に孤月が足をかすめる。
「趣味悪」
「すぐ終わったらもったいないだろ、レポート４本分の時間」
彼女の手中でおとなしくしているような風刃を見る。光の帯は１０本ほどか。
しかし妙だ。静かすぎる。揺らぎのない無機質な光だ。これはAと迅の違いなのか、それともこのトリガーが持ち主を選んでいるのか。
序盤からの
交錯が続く。互いのどんな変わり手も受け流されていく。まるで長く戦ってきた相手のようだが、手合わせをした回数は両手で足りるほどだ。
「さすが元孤月使い、相性最悪」
孤月の一本は
うわずった体を取り戻すためにAが宙返りへと転じる。派手な動作を目隠しに光の帯が放たれたのがわかった。それに一拍おくれて先ほど弾かれた孤月が空中から見かけ上の自由落下を始める。
「どこ狙って、！」
光の帯は太刀川の肩から少し外れ、阿呆らしく弾き飛ばされた孤月をさらに突き放した。やはり縫い留め損ねたか。興味あったのに。
一瞬のうちにプランAは見透かされたらしい。それでもいい。本命はまだ残されている。
「らしくないことするよね」
光の帯はあと一本。軌道は引かせない。
久しぶりの一刀勝負に心が踊る。ここで終わらせねば寝覚めが悪い。
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作者名：京 | 作成日時：2023年4月14日 21時
