夕霧�� ページ24
『…確かに、
そうしてたら未来は変わってたかもしれないわ。
でも、私たち人間は未来を見ることが出来ない。
その時の選択が正しかったなんて、判らないわ。
…悔やんでも仕方無い。
前を向かなきゃ』
そう云って、Aは夕霧の墓を見つめる。
『……って、夕霧ならそう云うと思う』
「…ふふ、そうだね。
夕霧さんなら、そう云いそうだ」
風が吹く。
墓の前に置いてある花が静かに揺れた。
『…そう云えば。
貴方、夕霧と会ったことあるの？』
「いや？無いよ」
『でも、夕霧と約束があるって…』
「嗚呼、それはね」
太宰はそう云って、
外套の中から一つの封筒を取り出した。
「…お墓の事を教えるのと一緒に、
君に会ったら渡そうと思ってたんだ」
そう云って、太宰は封筒をAに差し出す。
Aはそれを受け取った。
『…手紙？』
「そう、手紙」
太宰はポケットに手を入れ、
空を眺めるように上を向いた。
「…５年前、石川グループの拠点が燃えた後、
ポートマフィアはその拠点を捜索した。
…その時私は、夕霧さんの日記を見つけた」
太宰の言葉に、
Aは中原の部屋で見た日記を思い出す。
「…中身を拝見させて貰ったよ。
殆ど、君や蓮華ちゃんの事ばかり」
太宰はクスリと笑う。
「まるで、母親の日記のようだった」
『！』
「…日記の最後のページに、その封筒が挟まっていてね」
そう云って、太宰は視線をAに移す。
「中身、見てご覧」
Aは太宰に云われた通りに、
封筒を開ける。
『！え……』
中には、また二つの封筒。
その封筒には “ 黒蝶へ ” 、“ 蓮華へ ” とそれぞれ書かれてあった。
「…私は、夕霧さんと会ったことは無い。
だが、その封筒を見た時、
彼女たちにこの手紙を届けてくれって
夕霧さんに云われてるような気がしてね。
私が勝手に、彼女と約束したのだよ」
Aの封筒を持つ手が震える。
「……これで、やっと約束が果たせた」
太宰は微笑み、
Aに背を向ける。
「私はその中身を見ていない…。
後は、君に任せたよ」
そう云って、遠ざかる太宰の背中。
Aは震える手で、
“ 黒蝶へ ” と書かれてある封筒を開いた。
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レタス - とても読みやすい小説でした。ありがとうございました！ (11月5日 10時) (
レス) @page29 id: 56b8d7e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - とても物語の世界に引き込まれる感覚で、最初から一気に読んでしまいました。本当に面白かったです！中也と夢主ちゃんとの関係性もドキドキして読むのが楽しかったです。この作品を見つけられて本当に良かった☺️ (7月9日 22時) (レス) @page30 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
meme - 中也さんと夢主の関係がとても良くて感動しました。文才ありますね。すごいです。 (2021年9月5日 18時) (レス) id: 8a122b7869 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - とても感動しました泣 (2021年4月6日 19時) (レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
しま - 今まで読んだ中で一番深いと思ったお話でした。すごく読みやすかったです！ (2020年7月23日 19時) (レス) id: 2d44a29385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花翠 | 作成日時：2018年3月18日 20時
