116．笑顔 ページ23
貴「…聞かないと。」
アンさんにあの動画を見せられてから、ずっと会いに行こうか考えていた。
会って、ちゃんと話すべきか。
ずっとエミさんが隠してきた過去について、話しても良いのだろうか。
きっと、いや絶対、あんなの思い出したくないはずだ。
でも、このままじゃなにも変わらないから。
このままじゃ、エミさんが壊れてしまう。
私のように、全てを捨ててしまいそうな気がする。
貴「…守らないと。」
エミさんの笑顔を、守らないと。
＊
＊
ｺﾝｺﾝ
と図書室の扉を叩く。
なんの返事もない。
大抵こう言うときは鍵がかかっているのだが、ドアノブに手を掛けると簡単に開いた。
なるべく音を立てないように中に入る。
奥に進んでいく。
奥の、いつもの場所。
いつも、一緒に本を読んだりする場所。
一緒に、紅茶を飲みながら話をするところ。
そこに、エミさんは立っていた。
右手を机について、左手は顔に。
さっきのノック音は聞こえなかったのだろうか。
私は、恐る恐る話しかけた。
貴「…エミ、さん。」
エ「ｯ…」
その瞬間、時の流れが遅くなったように感じた。
きっとエミさんは勢い良く振り向いたのだろうけど、私にはゆっくりに見えた。
振り向いた衝撃で、涙が一筋溢れた。
泣いていたのだ。エミさんは。
エ「す、みませｯ…」
エミさんは私から顔を背けようとする。
でも私はそれを止めるように、エミさんの二の腕を掴んで振り向かせた。
向かい合わせになるように。
両手でしっかりと二の腕を掴んで固定して、下からまっすぐ目を見る。
咄嗟にしてしまった。
どうしても、泣いているエミさんをそのままには出来なかった。
エ「A、さ…ｯ…」
貴「エミさん。泣いてるのは、アンさんが原因ですか？それとも、あの動画の事ですか？」
エ「ｯど、して…それを…」
貴「…答えてください。」
エ「…どっちも、です。あの動画に縛られるのが…彼女に縛られるのが…過去に…縛られるのが…。」
ポロポロと、涙を溢す。
私は、気の利いた言葉の一つも掛ける事ができない。
笑顔になってほしい。笑ってほしい。
幸せになってほしい。
貴「…エミさん。原因がなくなったら、また笑ってくれますか？」
エ「ぅぁ…ぁ…ぅｯ…はｯ、い…わら、いますｯ…」
貴「良かった。」
自分でも嘘か本当か分からない笑顔をエミさんに向け、私は部屋を飛び出した。
彼を笑顔にするために。
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trap(プロフ) - 428-clover さん» いえいえ、こちらこそここまで読んで頂き有難うございます。続編はなるべく早く公開出来るように頑張ります！ (2019年3月12日 19時) (
レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
trap(プロフ) - じゅぴぴさん» そうです。私こそ紙です！← (2019年3月12日 18時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
じゅぴぴ - 最高……作者さん神 (2019年3月12日 18時) (レス) id: 5ca5f272e2 (このIDを非表示/違反報告)
428-clover - trapさん» 返信有難う御座います。公開を楽しみに待っています。素敵な作品をありがとうございます (2019年3月12日 16時) (レス) id: 19ad0dfb0e (このIDを非表示/違反報告)
trap(プロフ) - 428-clover さん» この話の続編は誤字や変な文面を確認&手直しした後に公開しようと思っています！ (2019年3月12日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
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