49．違う ページ6
走る、走る、走る、走る、走る．．．。
ただ走る。
何も考えずに走る。
赤から逃れるために。
他人の赤を見ると、私じゃ無くなるから。
＊
＊
ｶﾞﾁｬ
軍「ｯ…A、さ…」
来たのは、武器庫。
他に思い付かなかった。
誰かが居る場所に行きたかった。
だからここを選んだ。
誰かが居ないと、自分が壊れてしまいそうだったから。
…でも、もう連絡は届いてしまったらしい。
私がリナを傷つけたという連絡が。
多分もう他の人も無理だろう。
…なら、これを知らない国民が集まる城下へ行こう。
その方が、軍曹にも迷惑がかからない。
背を向けて、部屋を出ようとする。
でも、なぜか止められたのだ。
軍曹によって。
軍「…待って。俺は、君がそんな事をするようには思えないんだ。」
貴「…」
軍「…ここにいて。他の人は滅多に来ない。だから、」
貴「良いですよ。私の事なんて。軍曹まで巻き込むつもりはない。ここへはなんとなく来た。ごめん。居ると知っていながら。」
嘘だ。
私は巻き込もうとしたじゃないか。
軍曹が居るのを知っていて、来たじゃないか。
軍「…もう遅い。もう俺は巻き込まれたんだ。最後まで付き合って。」
貴「…良いの？裏切り者なのに。」
軍「違うと信じてるから。」
…軍曹の言う通りだ。
私はもう既に巻き込んでいる。
だったら、巻き込んだ責任として、私は彼の言う通りにしよう。
もしも彼が問い詰められたら脅したと嘘を吐こう。
貴「…分かった。よろしく、軍曹。」
軍「うん。あと、俺の他にも、兄さんには伝えとく。兄さんなら信じてくれる。」
貴「軍曹の好きにしていいよ。」
軍「ありがとう。」
軍曹に奥に案内される。
奥には一つの扉があって、中に入ると生活感のある部屋が現れた。
ここは軍曹の部屋らしい。
「ここで待ってて」と言い残し、軍曹は武器庫を出ていった。
私は彼の指示通り中に入って扉を閉める。
ソファーに座るのは申し訳なかったので、部屋の隅に膝を抱えて座った。
＊
NOside
兄「ｯ軍曹！A見んかったか？！あいつがそんな事するわけないって分かってんねん…でも、まだ俺は信じきらとらん…やから会ってほんまの事聞かんと。」
軍「Aさんの場所ならわかります。来て下さい。そして決して誰にも」
兄「あぁ、他言せん。」
軍曹は満足そうに頷くと、兄さんを連れて武器庫に戻った。
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