83．葛藤 ページ40
ゾ「…一人は…嫌や…」
ゾムはいつの間にか寝てしまった。
時折寝言を呟きながら。
ゾムは、一人じゃないのに。
彼らが居る。互いの信頼から出来た仲間が。
太くて丈夫な絆。
それを切ることはかなり難しい。
そんな彼らが、ゾムを一人にするわけない。
見捨てない。
貴「…仲間…友情…家族…」
仲間だけじゃない。ここは暖かい。
家族と一緒に居るような親近感。
何だかんだ言ってお互いを認めあってる友情。
壁の外から見ているだけでも分かる。
傍観者の私でも。
そこで何が起こっても私にはどうする事も出来ない。
傍観者だから。
今のゾムの不安は、その壁の中で起こったこと？
それとも外で起こったこと？
私が居る壁の外で起こった不安なら、消すことが出来るかもしれない。
…無力な私には無理かもしれないけど。
ゾ「にぃ…ちゃ…いや…ゃ…」
…これは、壁の外で起こった不安。
ここに居る人達とはまた別の誰かの影響で不安を感じている。
兄ちゃん…ゾムのお兄さんだろうか。
貴「…」
無言で抱き締める腕に力を込めた。
今はこれしか出来ない。無力な私には。
感じ取ることが私には出来ない。
何が怖くて、不安なのか。
言葉にしてくれないと、私は何も出来ない。
佐織の時もそうだったから。
＊
＊
貴「…ん…」
ゾ「起きたん？」
貴「…ゾムこそ。」
ゾ「ちょっと前にな。」
いつの間にか私も寝てしまったみたいだ。
目の前には自分の腕を私の頭の下に置いているゾムがこちらを見つめている。
つまり向き合う形で一緒に寝転んでいるという事。
通りで布団の中が暖かいと思った。←
ゾ「よう寝た？」
貴「ん〜…まだ眠い…」
ゾ「じゃ、昼寝すっか。」
貴「うん…Zzz」
ゾ「早すぎワロタ。」
暖かい布団に眠気を誘われ、すぐに意識が途切れる。
気持ち良さそうに眠るAを、ゾムはただ眺めていた。
ゾ「無防備過ぎんねん。」
普通男と二人っきりで布団で寝とったら驚くやろ。
と呆れたように呟く。
よくよくAを観察すると、日焼けしていない白い肌、紅い唇、長い睫毛、少し赤みを帯びた頬．．．興味本位でゾムは自身の親指の腹で唇をなぞる。
薄く開いていた唇はそれによって閉じられ、少しだけくわえる感じになる。
これにはゾムも顔を赤らめた。
ゾ「ヤバイヤバイヤバイ…俺の理性がヤバイ…耐えろ…耐えるんや…」
呑気に眠っているAとは反対に、理性と葛藤しているゾムであった。
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