60．城下 ページ17
貴「…城下行ったらって言われたけど、行くとこない。」
城下に行こうと思うも、特に行く宛もない。
だったら城に残って全員から冷たい視線を浴びてても良いかな。
どうせ何も感じない。
私にとってデメリットはない、はず。
「Aちゃん！」
貴「ん？あ、オスマン。」
オ「やっほ〜」
廊下で突然肩を叩かれ、振り向けばいつもの読めないニコニコ笑顔のオスマンが。
なぜ話しかけてくるのだろう。
私は裏切り者だから一緒に居たら悪く言われるのに。
…彼も巻き込みたくない。
彼はゾムのように突き放すことは出来ないだろう。
貴「なに？」
オ「ん〜？一緒に来てほしいとこがあるんよ。」
貴「…拒否権のない質問だね。」
有無を言わさない視線に、私は肩を竦める。
どうせ行くところもなかったんだ。別に良いだろう。
それに、最近ここに居ると気が滅入りそう。
なにも感じてないと思ってたんだんけど。
意外とダメージ喰らってるんだな。
オ「よう分かっとるんやん。」
貴「行くとこなかったし。」
オ「じゃ、行こか。」
オスマンに手を繋がれ、引かれるようにして城を出た。
＊
オ「城下初めて？」
貴「うん。まぁ、一回来たけど馬車だったし。」
オ「じゃあ帰りにいろいろ案内したるよ。」
貴「ありがと。」
城下なら私が裏切り者と知っている人は少ない。
たまの気休め位しても良いだろう。
…一ヶ月も耐えたんだから。
それにしても、お洒落な町だな。
ここは海に近いから船の音が微かに聞こえる。
本物の音を聴いたのは初めてだ。
またオスマンに手を引かれる。
オスマンはいったい何処に向かっているのだろう。
＊
少し町を外れた所。
自然に囲まれたそこに、それは建っていた。
綺麗な教会。
中からは子供達の元気な声が聞こえてきた。
オスマンは幸せそうに笑い、私を連れて扉を開けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 232人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
