55．ありがとう ページ12
あれ以来、シッマと兄さんが話しかけてこなくなった。
それは、また悪に近づいたという知らせでもあった。
これでいい。いいんだ。
心が痛いとか、知らなくて良い。
ゾ「なぁA。シッマからの信用なくなったで？」
貴「うん。」
ゾ「なんでほんとの事言わんのん。」
貴「別に嘘ついてない。」
廊下。
二人で並んで歩く。
使用人たちが私を見ている。
使3「ねぇ見て、裏切り者。」
使4「ほんとだぁ。早く居なくなれば良いのに。」
それは消えろと同義ですか？
そう問い掛けたいけどまともに相手してくれる人なんて居ないだろう。
私には分からない。
消えろという意味で言ったのか、この城からなのか。
使1「ゾム様も一緒だぞ。もしかしてグルなんじゃね？」
使2「あ〜ありそう。」
ゾムは関係ない。
彼を突き放さないと。
彼まで巻き込みたくない。
貴「…ゾム。邪魔だからどっか行ってよ。」
ごめん。ごめん。
巻き込みたくないんだ。
ゾ「…すまん。」
ゾムは一瞬で姿を消した。
消える前、酷く悲しそうな顔をしていた。
ごめん。今度部屋に食べ放題の無料チケットあげるから。
私が消える少し前に。
＊
ゾ「A…」
貴「…はぁ、なにか用？」
ゾ「あ、いや…すまん、なんでもない。」
ごめん。君が折角”仲間”と認識してくれたのに。
期待に添えなくてごめん。
そのまま私から距離をとってください。
お願いします。
＊
ゾ「…っ」
貴「…何？」
ゾ「…なんでもない」
ゾムはなにか言おうとして、そのまま姿を消す。
大丈夫。私は傷ついてないよ。
だから、自分を信じて。
自分が疑いたいなら、疑って。
それが、ゾムの普通でしょ？
＊
ゾ「…」
貴「…」
数日が経った。
無言ですれ違う。目も合わせずに。
それでいい。ありがとう。
私の期待に答えてくれて。
これで、残りは五人。
その内三人は引いて、二人。
軍曹と…神。
私は、救ってくれた人になんて最低な事をするのだろう。
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