├ ページ11
その日の夕方、私はグルッペンと引き離され警察に話を聞かれた。両親は突然弟だと言い出した私とグルッペンを気遣うように言いたくないことは言わなくていいからねと言いつつ引き渡した。私は十歳ながらに不満を隠し笑顔で受け答えをした。
三時間ほどで事情聴取が終わると私は迎えの車の中でグルッペンを待った。窓からこちらに走り寄ってくる彼の格好を見れば品のよい服に身を包んでいた。チラリと専属運転手に視線を向ければ奥様の指示でございます、との返答。
私は彼を母さんが受け入れてくれたことに喜び飛び乗ってきたグルッペンに突進した。グルッペンは戸惑いながら一緒に暮らせることと短いお礼を伝えてくれた。
「グルッペン、私の弟」
「…姉さん、」
はにかみながら私を姉さんと呼ぶ彼に感じたことの無い感情が溢れるのが、分かった。
―――――――――
私は十七になり、グルッペンは新しい戸籍上十六になった。
義理の姉弟になり七年。どんどん男らしく、綺麗に育っていく彼に私は危機感を覚えた。いつか感じた感情が暴れ始めたのだ。彼はもう幼い子供ではない、と。守るべき存在ではない、と。私は焦り一人で進学先を決定した。医者を目指し国内有数のお嬢様学校に通っていた私は大学は留学するという選択をできるくらいには頭脳を磨いていた。
それはグルッペンに勉強を教えるためだったのだが、やっててよかったと密かに安堵した。
親には口裏を合わせてもらい首都の大学に通い寮に住んでいることにした。すぐにばれなかったのは、グルッペンの学年が一つ下で受験勉強に追われ始めていたからだ。
罪悪感を感じながら空港に向かう。見送りに来てくれたメアリーの手を両手で握りながら私は伝えた。声が震えていたはずだが、メアリーは気づかないふりをしてくれた。
「メアリーお願い。グルッペンをお願いね」
「あの子はずっと私の後ろについてきていたの」
「バレれば彼は私を追ってきてしまうかもしれない」
最後の言葉は、そうであって欲しいという私の願いだった。はい、と力強くうなずいてくれる彼女の手をそっと離し、私は飛行機に乗り込んだ。
上空から私の家がある方を見る。
グルッペンに対する気持ちを姉だからと押し殺し、一人なのをいいことに涙を流した。
これくらいなら、許される気がした。
(続きます)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ | 作成日時：2017年8月13日 22時
