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先輩方が卒業ということで、今はもうほとんどの業務を私達が請け負っている。正式な生徒会の任命は卒業式の前日に時間を設けてやるらしい。盛大にしなくてもいいんですよという私の声はグル先輩の耳には聞こえなかったらしく彼は任命式のプログラムを既に立てているようだ。
サプライズだと詳しくは聞かされていないが何やら面倒くさそうな予感がする。
約一年、伊達にそばで過ごした訳では無いんです。
ふふん、と誰もいない生徒会室で一人鼻を鳴らす。文化祭の準備で忙しい今、私はここでお留守番だ。提出期限の遅れた書類を待つために。
生徒会室の扉が待つ片手間に私は各クラスから来ている備品の要請や文化部から来ている予算の申請書に目を通していた。
｢……お化け屋敷３クラスも要らないでしょ…招集して公平にくじ…？｣
ぶつぶつと呟きながら３クラスの書類を纏めてクリップで留める。机の隅に置いている再考慮の束に重ねた。残りの書類に軽く目を通し特に問題は無さそうだと判断して欠伸を一つ。
｢…これが終われば先輩方もそろそろ引退か｣
｢寂しいのか？｣
｢そりゃそうですよ。ずっと一緒に仕事してましたし……｣
突如聞こえてきた声に返事を返して固まった。今この部屋には私しかいなかったはずである、と。伸びをしていたために上を向いていた視線を正面へとゆっくり戻す。
｢……グル先輩｣
｢どうした？A｣
｢いえ、驚いただけです。…いつ戻られました？｣
｢今。｣
はあ、そうですか。
私は席を立つと革張りのソファーに腰掛ける先輩のために紅茶を入れる。お湯がわくのを待つ間、下品であることを自覚しながらも机に軽く座った。
｢…先輩は寂しくないんですか？｣
ぽろり、と思わず口から飛び出た言葉。それはしっかりと先輩に聞こえたらしく、先輩は少し考えるように顎に手を当てた。
｢そうだな…トントン達は実に優秀な人材であった。手放すのは惜しいが、仕方ない。｣
黙って次の言葉を待つ。カチッという音がして電気ケトルがお湯が湧いたのを知らせてくれた。何も言わずにお茶を入れる。
｢彼らと離れるのは…寂しい、な。三年も共に過ごした戦友とも言える奴等だからな｣
ふっと優しく笑った先輩に少し胸を痛めながら、完成した甘いミルクティーを差し出した。
一口啜った先輩からうまい、と褒め言葉を頂いた。…嬉しい。
｢だがな、俺はお前の離れるのも寂しいゾ｣
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作者名：むぎ | 作成日時：2017年8月13日 22時
