★護る ページ27
閉じていた瞳を、ゆっくりと開く。
真っ白で何もない空間。
赤い扉を開けてから、俺が観ていたモノは…
それぞれの、“色”を持つ人々の物語。
そう言うのが正しいのか？
『…あ、おはよう。』
…誰だ、何て言うつもりはない。
さっきまでずっと聞いていた声だから。
…それに、
「久しぶり、だな。」
俺にとって、2度と会えないと思っていた人だから。
俺の、大切な、人。
―――――だった人。
「変わんないな、あの頃から。」
『そういうグルッペンは変わったよね、…威圧感とか、その辺が強化されてる。』
「何だそれ、意味わかんないぞ」
こうして久しぶりに会えたのに、いつもと変わらない自分でいられることに安心する。
「…で、どうして俺を選んだ？」
『どうして……うーん、グルッペンだから？』
悪戯っ子のような笑顔。
その奥に在るのは嘘じゃない。
『後悔、してたの。何も言わずにグルッペンの前からいなくなったこと。…だからこれは、改めて別れを言うための伏線……かな。』
…結局、現実は待ってくれない。
「なぁ、お前は……」
『夢だと思ってくれると助かるな、グルちゃん。』
懐かしい、この呼ばれ方。
俺のことを『グルちゃん』って呼んでくれるのは今にも昔にもコイツだけ。
流石に高校生にもなると恥ずかしかったが、それもまた良い思い出だ。
それに今は、こう呼ばれることが懐かしくて、密かに願っていた。
『ごめんね、グルちゃん。』
「…何が」
『護ってくれようとしたのに、それを分かってたのに、私は、』
雨が降っていたある日の夜、コイツは森の奥でひっそりと命を絶った、はずだ。
そんな彼女が今、目の前にいる。
あの頃と何も変わらずに。
『だから、今度は私がグルちゃんを護る。』
「……っ、」
『誓うよ、今度こそ離れない。』
―――――“絶対、俺がお前を護る。”
そんな幼い頃の約束が甦る。
それすらも守れなかった俺は、コイツを護れなかった俺は……!!
『グルちゃん。―――――笑って？』
「…っ!」
そうだったな。
コイツは暗いのを嫌うんだった。
俺がぎこちない笑顔を浮かべると、安心したように微笑んできた。
『ありがとう、＿＿バイバイ。』
そう言って、少しずつ影が薄れていき、
やがて消えていった。
…俺こそありがとう、だよ。
さよなら、初恋の人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒猫 - リクエスト緩募 (2019年3月29日 18時) (
レス) id: 4ccfeb950d (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - バキュラさん» リクありがとうございました！はい、いつでもお待ちしています！ (2018年4月19日 20時) (レス) id: ed1fc4b4b8 (このIDを非表示/違反報告)
バキュラ(プロフ) - 黒猫さん» ありがとうございます!! こんなので大丈夫というか、こういうのが読みたかったんです…!! すごく好きです(笑) 機械があれば、またリクエストさせてください！ (2018年4月14日 22時) (レス) id: 06aecc80c5 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - バキュラさん» リクエストありがとうございます。こんなので大丈夫なんでしょうか…？(困惑) (2018年4月14日 21時) (レス) id: ed1fc4b4b8 (このIDを非表示/違反報告)
バキュラ(プロフ) - グルちゃん読みたいです(唐突) (2018年4月14日 11時) (レス) id: 06aecc80c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒猫 | 作成日時：2018年2月5日 20時
