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gr「謝るな…か。」

懐かしそうに目を細めるグルッペン。
私が咄嗟に口から出した言葉は、グルッペンの思考を過去へ飛ばしてしまったらしい。

gr「我々国が出来てすぐ、俺は幹部集めに走った。トントンの次に引き入れたのが大先生だった。」

これは黙って聞くのが正しい。

gr「彼奴、自分のことを低く見すぎてたんだ。今でもそれは変わらないが、ずっと「ごめんなさい」ばっかりでな。だから言ったんだ。謝るな、って。」

私とグルッペンは似ているのかもしれない。
だから嫌いなのかもしれない。

__同族嫌悪。

gr「大方改善されたが、まだ駄目だな。」

さりげなく同調を求める彼から目を逸らす。
憂鬱そうに溜め息を吐く彼は、今まで見たことが無いほど弱くて、脆くて、今にも崩れそう。

gr「お前にやる。」

『…これって、貴方が、』

大切にしていた懐中時計。
その言葉を飲み込み、先程と別人なのではないかと思うほどに柔らかな笑顔を浮かべたグルッペンを見る。

gr「それを持っていることがお前がお前である証拠になる。いずれお前を助けるはずだ。」

『……ありがとうございます。』

gr「頼む、来週まで独りにさせてくれ。」

柔らかな笑顔かと思えば急に考え事をしているような鋭いいつもの視線。

『承知致しました。それでは、来週のこの時間に。』

自分の世界に入ったグルッペンから返事が返ってくることは無い。想定済みだ。

『失礼しました。』

閉めきられた部屋、形だけの窓しかない。
そんな空間で、彼は何を考えるのか。

私を救う、なんて馬鹿げた考えだけはやめていただきたいところだけど…考えるのは本人の自由。
干渉はしない、させない。

____

『ヘーベアン様。』

契約相手の名前がヘーベアンだと知った。
成る程、聞いたことのある名前だ。

「お前、それ何処で知った…!?」

『貴方の国です、国民なら誰もが貴方の名前を知っているでしょう?』

「そうか…流石だな、総統秘書。」

私がこうして彼の部屋を訪ねるのはもう日課。
親睦を深めるためではない。
仕事があるからでもない。

「…で、どうなんだ。」

『話しても構わない状況は作りました。あとは、彼を国に帰すのを待てば問題ありません。』

「そうか、分かった。」

ヘーベアンが毎日来いと言ったから。
仕事っていうのも嘘ではないかな。

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作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時

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