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静寂に満ちた部屋。
見覚えがあるはずがない。
ただ変わらないのは、雲の隙間から漏れる月明かりが部屋を照らしていることだけ。
今頃、国はどうなっているだろう。
目を閉じて、2つの国に思いを馳せる。
1つは、きっといつも通り。
私の干渉が無くなって時間が経った。
この状況を知らないし、これからも知れない。
もう1つは、動揺しているだろう。
3人も幹部が倒された。
その上総統が拐われ、総統秘書も拐われた。
まだ真相を知らない。
総統秘書__つまり、私。
今は謹慎期間中、でも本来は総統秘書。
私は拐われたのではない。
“誘いに乗った”だけ。
それを勘違いされては困る。
もし国に戻れたなら、しっかりと説明する。
「A。」
名を呼ばれ、静かに目を開ける。
目の前には“契約相手”の姿。
「グルッペンに会わせてやる。来い。」
どうやら、この契約相手は国のトップらしい。
名前は知らない。今の私には調べる術も無いし、そもそもあまり興味がない。
明らかに他とは違う扉に着く。
目で入室を指示された。
『失礼します。』
ノックの後、扉を開けて入る。
後ろに続くと思った契約相手は続かなかった。
扉の前で見張るつもりか。
gr「……A!?何故、此処に。」
『貴方を追って、というのでは駄目ですか?』
gr「………」
『冗談です。貴方の命と私自身を賭けた取引をした結果です。無事取引は成立、貴方は我々国に戻れます。』
久しぶりに発した声は思った以上に無感動。
でもどこか懐かしさを感じる。
gr「それで、お前はどうなるんだ?」
『どうにもならないかと。一定期間を過ぎたらそちらに戻れると思いますよ?』
申し訳ございません、勝手な行動をして。
用意していたその言葉を飲み込む。
確かに勝手な行動だ。謝らなければならない。
でも、私は後悔していない。
これ以上の結果は望めないと思った。
だから謝らない、今は。
彼らがこれ以上の結果を出すまで、絶対に。
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作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時