【小説】物語の主役は我々だ！【詰め】 (ページ20)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:2,093 hit

4．最低なページ20

誰のことも死なせたくない。

そう言う彼女の瞳には強く強く燃える確かな覚悟があったように思う
死にたがりの皆さんは口を揃えてこう言うのだ、彼の居ない世界で生きる価値はない。と
何よりも怖いのは、それを｢兄｣を失った彼女に面と向かって告げること
誰も何も思わないのだろうか？
彼女は恩人であるグルッペンを失ったのではなく家族であるグルッペンを喪ったことに気づかないのだろうか、？
まだ家族なんて尊ぶべき存在を喪ったことのない俺には何も分からないけど、彼女は誰よりも傷ついている筈だ。

｢…Aは死にたくならない？｣

しまった、と思った
あまりに彼女が明るく笑うから、前を向くから。
絶対に聞いてはならないことだったのに。
口からついて出た言葉はなかったことにできない。
俺は慌てて謝罪しようと口を開いた

｢ご、ごめ｣
｢そうだね｣
｢…え？｣

否定…しなかった。

｢私ね、実は最低な奴なんだよ｣
｢Aが？｣

そんな筈ない。Aはいつだって優しくて強くて……最低なんて言葉、一番似合わないじゃないか。
それでも彼女は睫毛を伏せて柔らかく笑って告げる

｢みんなが死にたがってくれて嬉しいんだ…｣
｢どうして…って聞いてもいいんスか｣
｢はは、いいよ。だってね、みんなが死にたがってくれるから私は死んで欲しくなくて必死になるでしょう？そうしたら私自身が死にたいって思う時間がなくなるんだよ｣

自分を憐れむように、彼女は嗤った

｢ね？最低でしょ？｣