【wrwrd】彼方へ辿り着く為 (ページ15)

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Text.15 - Still hiding the relief ページ15

“城郭都市ウォーレス”。
綴りがどうとか以前に、ザ・カタカナ。
響きは凄くかっこよくて気に入ったけど、脳内に広げた日本地図には明らかに載っていない地名だ。

エーミールさんの言う通り、ここは私の知っている世界ではなく、その過去や未来に位置する場所でもない。
文明レベルは酷似しているが、元いた第三惑星とは全く別の異界だ。異世界だ。

ああ、痛い。
異世界召喚？転生？うっ頭が。

ちょっとしたパニックに陥っているのを知ってか知らずか、何も言わず間を置いてくれているエーミールさんいい人……よし、少し落ち着いた。
得られた情報を整理して、予測を立てて、最後に言葉を組み立てた。

「いろいろ教えてくださってありがとうございます」
「いえいえ、お役に立てたなら何よりです」
「また聞きたいことができたら聞いてもいいですか？」
「喜んで。捻れについてはあまり詳しくないですが、この国の歴史についてでしたらいつでも」

二つ返事で快諾してくれたエーミールさんは、こんこんと響いたノックの音に振り返る。
彼を呼ぶ声が扉の向こうからして、すみませんねと軽く会釈した後、エーミールさんはカーテンの外へ歩いて行った。

「……よかった」

聞こえ始めた話し声を隠れ蓑にして、ぼそりと呟く。
小さくこぼした本音は、強張った肩の力を抜く余裕と覚悟をもたらしてくれた。

見ず知らずの他人もとい異界人の私を優しく受け入れてくれたことにはとても感謝している。
ただ、今こうして安堵しているのは、深く詮索されなかったことに対してだ。

まだ自分の身に起こったことを、簡単に鵜呑みにはできない。
それこそ聞きたいことはまだ山ほど残っているのだが、ひとまずは異界に来た経緯と異界の概要が知れれば充分だ。

まだ時間はたくさんある(・・・・・・・・・)だろうから。

「Aさん、動けますか？」

戻ってきたエーミールさんが開けられたカーテンの隙間から覗く姿勢で問うてくる。

「あっはい。どこか移動するんですか？」
「これから我が国のトップにお会いしていただこうと思いまして……起きて間もないところ申し訳ないのですが」
「っ……おほあ」
「なんか漏れてますねぇ!?」

安堵感が急に緊張感に変換されて、口から変なものが出そうになった。