【wrwrd】彼方へ辿り着く為 (ページ8)

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Text.8 - While I play a game, passage of time becomes fast ページ8

《三連勝か、調子出てきたな。まだまだいけそうじゃない？》
「いけそうですけど、デッドラインは22時ですからね」
《え？まだ1時間くらいじゃない？》
「いや早くも2時間経ってるんですが……」

とぼけるマスターに時計を見るよう促すと、ほんとだーなんて乾いた笑いが聞こえてきた。
ヘッドセット越しのボケに溜め息をこぼす。管理人さんも毎回こんな気持ちなのだろう。

《ソロだったらすでに根をあげてる頃だわ》
「マスターせっかちですもんね」
《お前の気が長すぎるんだよ》
「そうですかね……」

これでも沸点は低い方だと自分で思っている。が、FPSにおいては確かに長すぎるところはあるかな。
今朝だって、管理人さんが来るまでは夜が明けていたことにも気付かなかった。

普段の生活が夜型というわけではないが、一度FPSを始めると外界からの情報が遮断されたようになってしまい……知らぬ間に朝がやってきている。これは本当に、我ながら厄介だ。

……まあ、朝まで没頭してしまうからこそ、たまに(・・・)やる程度にしているのだが。

《ソロに比べて実感はどう？衝動治まってる？》
「あと1時間で切り上げられる気がしません………」
《依然暴れん坊将軍か》

次の対戦に向けて、画面がロードされる。
くるくると回り続けるNow Loadingの象徴をぼんやり見ながら、おもむろに返事をした。

《マルチだと時間見る余裕あるのに、なんでソロだと気付かないんだ？》
「……なんかこう、テレビの中に頭突っ込んでるみたいな錯覚に陥るんですよね」
《……大丈夫、今日は俺がついてる》
「さっきまで私と同じ状態になってた人に言われても」

説得力が仕事をしていないが、さすがに二日連続で徹夜はしたくないので、頼みの綱ではある。
是非とも有言実行していただきたい。大人の気概を以ってストッパーの務めを果たしてほしい。

《ま、大丈夫だろ。一応アラーム設定してるし》
「お願いします。私アラーム設定しても気付かなかったので」
《……もしかして俺の声までシャットアウトされるやつ？》
「ホラー染みてきましたね、助けてください」
《うわ怖え！空気変わったぞ！》

甘く見てもらっては困る。
私はかれこれ数年この空気を味わって生きている。マスターにもおすそ分け。

鳥肌がー！なんて騒ぎ立てるマスターの悲鳴と同時に、再びデスマッチが開始された。