心が7個 ページ8
kn「A…俺はお前がおらんくなるのは嫌や。絶対離さへんからな。」
ぎゅっと抱き返す。
『シッマ…怖いよ。シッマ!私、死にたくない!シッマと一緒にいたい!』
泣きじゃくるA。
こんな時、どんな風にかえせばいいんや?
返す言葉が見つからず、ただ頭の中を何かがぐるぐると回っていた。
『シッマ。約束して。』
kn「なんや?」
『私がね、死んでも。絶対にあの花を大切にして。私はどうでもいいから。あの花は大切にして。』
腰にギュッと手をまわして小さい声でつぶやいた。
『あとね、シッマの最後の大会、絶対見に行ってやるから。』
顔を上げて満面の笑みでそう言った。
その顔は世界で一番輝いて、世界で一番悲しい笑顔だった。
kn「俺の最後の大会、もう少しやからな。楽しみにしといてな?来週の日曜日や。」
『大きい声で応援するから。シッマーって。』
その日は俺にとっても、あいつにとっても、
思い入れの深い一日になったことだろう。
『今日ね、最後のオーボエの音の日だからさ。走らないで聴いてほしいんだ。』
無茶なお願いをしてきたあいつ。
そんな言われる前からするに決まってんだろ。
kn「今日もグラウンド10周な。」
「「「はい!」」」
いつも通りの指示を出して俺は走らずにグラウンドの陰に座る。
kn「もう、今日が最後か…」
なんて少しアンニュイな気持ちになりながらつぶやく。
〜♪〜♪〜
聞こえる。
あいつの音。
俺の中で勝手に決めてる応援歌。
いつも以上に悲しくて切なくて、暖かい音だった。
もう聞きなれたこの音。このフレーズ。
kn「今日は、鼻歌しないようにしよ…」
あいつの音を聞くために耳を傾ける。
少しオレンジに染まったグラウンド。
グラウンドを走る音。
下校する者たちの声。
そしてAのオーボエの音。
全てが交じって雑音も音楽の一部になる。
目から、耳から、音楽が入ってくる。
そして音ははかなくも終わってしまった。
三年間。聞いてきたこの音。
少しずつ上手になって少しずつ切ない音になって
あいつが悲しそうなときは暗い音で。
あいつが嬉しそうなときは明るい音で。
おめでとう、ありがとうという意味で拍手をする。
kn「お疲れさま。」
そう呟いて、練習に戻る。
「水嶋。さぼってんなよ。次なにすんの?」
kn「ばれてたか…まあええわ。次はパス練でもするか。」
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ぜろ(プロフ) - クロノスさん» うわん…ありがとうございます。クズシマちょっと笑っちゃいましたw (2020年1月24日 14時) (レス) id: 245f42d98f (このIDを非表示/違反報告)
クロノス - よかったですわ マジで (タイトルのとこのコネシマ の英語『クズシマ』と読んだなんて言えない、、) (2020年1月12日 4時) (レス) id: 25a024680a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ(プロフ) - 無色さん» コメントありがとうございますぅうう( ;∀;)二人ともEND1では幸せな…はず!です(´・ω・) (2019年12月15日 17時) (レス) id: 245f42d98f (このIDを非表示/違反報告)
無色 - すごいいい話でした!軽く泣きかけました( ̄▽ ̄;)二人とも幸せになっているといいな(´・ω・`) (2019年12月13日 15時) (レス) id: 3580e498d4 (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ(プロフ) - 美希さん» このお話のシッマさん、過去には心あったっていう設定なんです!ここから少しずつタイトルの意味、分かっていくので!!!!楽しみにしていてください!美希さん、コメントありがとうございます! (2019年2月7日 14時) (レス) id: aa0aa3566b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぜろ | 作成日時:2018年11月4日 22時