今日は何さんですか？【川西太一】

目黒さん ページ35

まあ、そういう前段階の話はいいとしよう。白布覚えとけよってとこはあるけど今はいいとしよう、うん。

とりあえず考えてみようと思ったのだ、HOWTO恋人というやつを！で、まず同級生の女子に少女漫画を借りてみたわけだ。参考書的な感じで。

え、感想？



「……川西大丈夫？ティッシュいる？」

「ヤベェ少女漫画ナメてた……くっそ泣ける感動しかない……ティッシュ欲しい……あ、鼻セ◯ブじゃなきゃヤダ……」

「文句言うなし」



泣いたね。名作かよ。

まぁ脱線したが、そこからいくつか案を考えてみたわけ。その一つをね？



「あの、その……ま、じゃなくてみ、あ、うん、え、あ、目黒さん」

「いや誰」

「ごめん素で間違えた。宮下Aさん」

「はーい？」



今から実践してみようじゃないか。ちなみに下校ナウね。２人で帰ってます。これもある意味恋人っぽいけど、もう少し頑張ってみようと思う。で、今の俺の緊張し具合伝わりますかね。ヤベェまじでやばい。目黒さんて誰だよ。

……緊張は仕方ない。息を吐いて、落ち着いて。ちゃんとそれを口にしてみた。



「ぎゅーってしてみませんか」



口にして、やっぱり恥ずかしくなった。世の中のカップルはすごいな。バカップルなんて言われる人は本当にすごい。こんなの心臓がいくつあっても足りないわ。事前申告制辞めればいいのかもしれないけど、ドキドキしすぎて心臓口から出そう。AEDください切実に。

そんな内心バクバクな俺に、一瞬Aさんはポカーンとした顔をした。でもすぐ表情が変わった。そう、まさに俺も予想していた赤面───……

ではなく、キラキラ顔。むっちゃ目輝かせてんですけど。いや、可愛いんだけど思ってた顔と違って、なんか虚をつかれた気分。恥ずかしさとか忘れた。

そして次の瞬間、彼女は右手を突き出して。「ぎゅー！」って言いながら拳を作った。

……可愛いけどそうじゃないんだ。

え？その後の俺？恥ずかしさのリミッターやら緊張感を一気に削がれたことやらで、なんの躊躇いも無くぎゅーって抱きしめましたとも。

今度こそ赤面してるAさんを確認しました。……勿論俺もなんですけど。

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