中野さん ページ22
「……ありがとう、太一君」
ぎこちなく彼女がそう言ってくれた。
つられるように俺もぎこちなく古典の教科書を差し出すと、これもまたぎこちなく受け取られた。
さてと……だ。
(待ってーこの後本っっっっっ当にどうしよー。ノープラン極めてるわ〜……え、この後どうするのがいいの、俺が「じゃあね」的なの言う感じ?ファイナルアンサー? )
まぁ無表情の奥底では、このように大混乱である。Aさんも今日持ったまま下を向いてしまっている。
どうしてこうなった?教科書貸すのってこんなにハードル高いっけ?
いやいや、元を辿れば俺がわけわかんない引き止め方したからだ。もっっっと辿れば白布の吹き込みだけどな。
「……太一君!」
「⁉ は、いっ!」
急に顔を上げたAさんに勢いよく名前を呼ばれて、上擦る声で返事をした。
なんだ、なんだ、何事だ。
「彼女さんいないんだよね⁉」
「イエッサー」
「借りてもいいんだよね⁉」
「オッ、オッケーです……」
「よし、じゃあ借ります!」
「了解っす……」
なんだこの体育会系のノリ。
……あ、いや俺体育会系の部活だわ、まさに。
というかこのノリを無表情でやり過ごせた自分を褒め称えたい。ハレルヤ。
「太一君!」
「ん?」
「きょ……今日は私、川西さんだから!!」
彼女はそう言って、教室を足早に去っていった。
心なしか、半ば叫ぶようにしてそう言った彼女の顔は、少し赤かったような。
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花見っ子(プロフ) - 黒アゲハさん» 嬉しい!あざす!! (2020年12月6日 23時) (レス) id: 20bc02c642 (このIDを非表示/違反報告)
黒アゲハ - 最高!!です!!(語彙力低下) (2020年3月8日 11時) (レス) id: e50eb8517a (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 柚子胡椒さん» コメントありがとうございます。おかげさまで完結です……読んでくれて嬉しいです。 (2019年3月30日 20時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
柚子胡椒 - 太一ッッ!!!もう、やばい。ヤバい(語彙力) こういう話大好きです!更新お疲れさまでした!もう、文章が綺麗すぎて…自分の名前出てきた時はハウッてなりましたね。はい。夢主ちゃんと太一可愛すぎて…白布が苦労するのも分かるわ…(笑) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 28791102e9 (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - Zeroさん» コメント感謝です。太一素敵ですよね…… (2019年2月10日 14時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2018年9月15日 21時