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しばらく歩いていたら、月島君が追いついてきた。面目無いどころの話じゃなくて、一言、蚊の鳴くような声で「ごめん」とだけ告げた。
隣を歩いていた山口君とも、そんな調子でほとんど会話がなくて、気まずい思いをさせただろう。
「……何が?」
「……国見と、話してきたんだよね」
「……まあ、大したことではないけど」
そう言いながら月島君は制服のズボンのポケットに手を入れ、何かを取り出した。カサッと音を立てて出てきたのは小さな紙切れで。
「はい」
「……何これ」
「国見から」
その言葉に固まる私に、月島君は無理やりそれを持たせた。手に握らされた紙を呆然と見つめてしまう。
それは、一端にシワが寄った、いかにもノートを破きました、と言わんばかりの紙。そこには走り書きで
“ 話したいことあるから、明日朝に中庭来て ”
と書かれていた。
私は国見の字を知らない。だから、この字が彼のものかはわからない。流れ気味だけど、綺麗な字。でも月島君のではないし、このタイミングで嘘をつくような人には見えない。
だから、これは、きっと。
「ツッキー、いいの?」
「……いいのもなにも、頼まれたから渡しただけ。さっきのは流石にひどかったけど……あいつにも言い分はあるみたいだし」
それに、と続けた月島君は私を流し目に見て、ニヤッと笑ってみせた。
「話聞くぶんには大丈夫そうだよ。それに、君だって言いたいことあるでしょ?言ってやればいいじゃん、そこで」
「……さっき、嫌いって言われたのに?」
「その分も言い返してやればいい」
「……こんなに迷惑かけた挙句なんだけど……怖いな」
「……じゃあ今は国見を信じないでいいよ」
「は?」
じゃあ、どうしろというんだ。
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雪猫(プロフ) - 花見っ子さん» いえいえ!大丈夫ですよ!続きも読ませてもらいました!国見ちゃん視点を読んでもっと面白いなって思いました!国見ちゃんがどう思ってたのかとか、あの誤解は結局どうなんだろうとか考えるのが楽しいです!続きも楽しみです!頑張ってください! (2019年8月19日 0時) (レス) id: 044c7ba7ac (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - しば子さん» 本当にコメント返すの遅くなってすいません……その上更新も酷く不定期で。その中で読んでいただけて嬉しいです。今後も少しずつ頑張りますので、よければまた見てくれたら嬉しいです。 (2019年8月11日 20時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 雪猫さん» ずっとコメントお返しできてなくてすいませんでした。今更なんですが本当にコメント嬉しかったです。自分で書いててあれなんですが、わかりにくいところも多いと思います。そんな中読んでくださってありがとうございました。続編も書いたのでよければ…… (2019年8月11日 20時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
しば子 - 国見推しなんですけど、話の続きがすごい気になるし続きを読むたびドキドキします笑このお話大好きです!更新楽しみにしています、無理しない程度に頑張ってください!! (2019年7月28日 10時) (レス) id: 923e20aa2a (このIDを非表示/違反報告)
雪猫(プロフ) - こうゆう感じのお話好きです!更新頑張ってください!!最近国見ちゃんが自分の中では来てて、続きが楽しみです! (2019年6月29日 1時) (レス) id: 7dccd2123b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年3月30日 21時