太宰さんはあの(？)美人さんが嫌いなようです。【文スト】

.貮拾肆 ページ24

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「A…………」


『よくAって言ってましたけど
誰ですか？』


『えぇっと確か、……＿＿＿A？』



脳裏でそれが過った時、今目の前にしているのは“現実”だった。

「本当に使えないわね!名前くらい
覚えなさい！(人のことは言えないけど…)
Aちゃん、この帽子が本体のやつは中原ちゅーや(中也)よ。

今日はリンタロウが一緒に買い物行けないって言うから
変わりにちゅーやが……」

物凄く嫌な事を言われた気がしたが
目の前の状況を判断するのに手一杯だった。
彼女も何故だかは分からないが
目を見開いて驚いていた。


「ッ………」


我慢の限界だった。
今まで触れたことがなかったその腕を。
今まで触れたことがなかったその体温を。


叶わぬ夢と思っていた。諦めかけた。
でも、分かるのだ。今なら、体温が。君の鼓動が。

彼女の手を引っ張り、
ゆっくり、自分の胸に引き寄せた。


「俺は…お前にッ、会いたかったんだッ。」


ずっと、ずっと。

自然と、大粒の涙が流れた。
ポロポロと、ボロボロと。


今日は雨が降るでしょう。


＿＿＿貴方は我を知らなくてもいい。
＿＿＿我は貴方の笑顔を知っているから。


「どうされましたか？泣いているのですか？嬉しいのですか？もしかして…

悲しい…のですか？」

そうだ。まさにそうだ。
自分は哀歓に埋まっている。夢で見たんだ。
お前が離れて行くのを。



＿＿お前が、誰かと笑っているのを。



「悲しいなら、悲しいと、
嬉しいなら、嬉しいと、言って下さい。
私は貴方を知らないけれど、
貴方は私を知っている様です。

それが何と有難いことかを、私は知っています。
然し、私は貴方を知らないのです。
自分の醜さと愚かさを許しては貰えませんか？」


本当に、君は美しい。
本当に、君は優しい。
優し過ぎて、今まで出会わなかった事を
自分を責めてしまうではないか。

この金縛りを、悲縛りとでも言おうか。
新しい言葉でも作ってみようか。


この悲縛りを早く、早く解いてくれ。
孤独とやらを無くしてはくれまいか？


雌蝶よ、戻って来ておくれよ。



「＿＿＿あぁ、幾らでも。」

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