我儘を言わせて ページ42
あれから母さんを抱えて、可能な限り安全に最短で部屋まで運んだ。その様子を見たヴィル達が急いで対応してくれたおかげで、何とか安静にさせることができた、母さんは多少うなされている。
「一言で言って疲労でしょうね」
ヴィルはため息をつきながら説明した。
「極端に感情が高ぶったのと、今までに使ったことの無いものを使った反動でしょうね、熱はかなり高いし、これから何があるかは分からないわ、誰か見ててあげてちょうだい」
「ありがとうございます、ヴィル」
母さんは、限界を超えてまで僕たちの為に動いて、使ったことの無い力も使って、感謝なんかいくらしても足りないだろう。
「ありがとう、母さん…」
「それはその子が起きてからまた言いなさい、じゃああたし行くわ、また来るわね」
「はい、ありがとうございます」
部屋に沈黙が訪れる。ユノ達は1度帰ってしまったからこの部屋には僕だけだ。最近は本の山が少しできてしまったこの部屋に、少し愛着を持ってしまった。
「母さん、またここでお茶会がしたいな…」
母さんは眠っている。今のうちに、我慢してたワガママを吐き出した。
「母さん、僕ずっとここにいたい…中じゃなくて、母さんの隣にずっといたい…母さんの支えになりたいんだ…僕もいい歳してるけど、母さんと一緒にご飯食べたいし、一緒に寝たいし、一緒に笑いたい…母さん、早くよくなって、僕…寂しいな」
自分に、まだこんな幼少な気持ちが残っているとは思わなかった。もう大人になったつもりだったけど、中身は結局子供のようだった。ユノ達の世話をしないといけないのに情けない姿だ。
「母さん…」
「…そこにいるのは、誰…？」
母さんが苦し紛れに声を出した。僕はハッとして母さんに近寄る。
「母さん！」
「…セイヤ？」
「うん、セイヤだよ、まだ寝てて、熱はかなりあるみたいだからさ」
「セイヤ…【私】ちゃんと、母親かな…みんなのお母さんになれてるかな…」
「大丈夫、母さん。僕たちには母さんしかいないんだよ、僕たちの所有者が変わっても僕たちの母さんは母さんだけだから、安心して」
母さんはふっと笑うと、また眠りについた。
「…母さん」
母さんが架空の薬を実際に持ってきたことは、アズールだけでなく僕も予想外だった。やっぱり母さんには勝てない。出来ないと知っていてもできてしまう。母さんは本当に凄い。
「母さん。大好きだよ」
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神里(プロフ) - カナリアさん» ありがとうございます、頑張ります！ (2021年3月27日 14時) (
レス) id: 2475bb3e2f (このIDを非表示/違反報告)
カナリア - 良い作品です。更新頑張ってください！ (2021年3月26日 7時) (レス) id: 74f0a1383a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：神里 | 作成日時：2021年2月27日 11時
