黒王子な8人目！⑤(JW) (ページ5)

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レッスンが始まり、早1時間。

Aくんも、必死にレッスンに食らいつきますが、周りは経験者ばかり。

当然、皆と同じようになんて行きません。

芸能界にまるで興味が無かったという彼。

ですが、ジャニーズが"歌って踊る男の子の集まり"ということくらいは分かっていました。

キラキラ踊る彼らを見て、生まれて初めて"挫折"と"疎外感"を同時に味わった、と当時を振り返って彼は言います。

ーーー

やっと休憩になりました。

周りの子達は涼しい顔で雑談していますが、苦しそうな表情で1人ポツン。のAくん。

飲み物を持ってきていないことに気づき、廊下の自動販売機で買って、レッスン室に戻ろうとした時でした。

「ピアニストがなんでここにおんねん」
「あいつ全然踊られへんやん(笑)」
「顔だけならモデルでもすればええのに」

今までAくんをよく思っていなかった子達が、ヒソヒソと喋っています。

レッスン室のドアに隠れて、下唇を噛み締めるAくん。

その時、

？「おーおーついにピアニストくん登場か！俺らも負けてられへんなぁ！」

「「………」」

？「な！Aくん！」

そのヒソヒソ声を打ち消すかのように、後ろから、わざと大声でAくんに喋りかけてきたのは……

そう、桐山照史くんです。

桐「おれ、桐山照史いうねん！よろしゅうなっ！」

Aくんの右手をしっかり握り、ブンブンと上下に握手します。

そしてその手を引いたままスタジオの真ん中まで。

どっかで見たことある顔…。
桐山くんの顔をじっと見つめるAくん。いえいえ睨んではいませんよ。

『あ……！』

桐「お！覚えてたくれてたん？もうさすがに道も覚えたやろ？」

『はい。ありがとうございました…。』

桐「ええってええって！ほんま死にそうな顔してたもんなー自分！(笑)」

Aくんは大の方向音痴。

地図は読まない(読めない)上に、自分の勘を信じすぎる癖はこの頃から健在でした。

初めて行く場所は大抵迷います。

先日、ヒラリー氏がインフルエンザで送迎が出来ず、1人で事務所に行くのに迷ってしまったAくん。

そんな彼を事務所まで案内してくれたのが桐山くんでした。

こうやって、割と中心人物だった桐山くんが喋りかけてくれたことにより、すっかり塞ぎ込んでいたAくんも、一気にジュニアに馴染めるようになりました。