硝子窓 (ページ10)

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気になるのはページ10

主屋の廊下の奥から、上品な和装の老婦人が出てきた

「二人とも、お疲れさんじゃったねぇ」

闖入者である、自分にも嫌な顔せずにっこりと声をかけてくれる

「マリさんは、おじいちゃんの従妹。ここに住んで、おじいちゃんの世話をしてくれてたんだ」

古希を迎えるくらいの年齢だろうか。マリの名前は鯉沼毬子といい、夫と死別して子供もいないこともあって、体を壊してしまった汐路の祖父の面倒をずっと見てきたという
　

長い間本家で暮らし、前当主のそばに居たなら、もしかしたら老婦人が一番の事情通かもしれない

「なんかあったら遠慮せんとゆうてね」

『ありがとうございます』

汐路の従姉妹達につれなくされた直後なので、優しいことながいっそう身に染みる

家を案内してくれるマリに汐路と一緒に着いていきながら、あっちこっちに視線が彷徨う

家の中央には、大人三人分以上に幅の広い階段が構えている
板の厚い透かし彫りの欄間や重厚の床柱を見れば、いかに狩集家が莫大な財を築いて来たがわかる

椅子、衝立、ランプなどの調整品、掛け軸や壺などの骨董品、どれをとっても財産的にも美術的にも価値があるものばかりだ

だが、目を引いたのは他でもない＿＿＿

『お札がいっぱい……盛り塩も』

広島東照宮や神社の各種お札が、盛り塩と榊と共に、神棚はじめ至る場所に祀ってあった

それだけではない。伊勢の蘇民将来子孫家門のお札、悪霊退散や災難除けのお札も、あちこちの柱や長押しに、それこそ節操のない程貼ってある

神棚の御札箱の中で、神様が喧嘩しないが心配になる程の量だ

『玄関に大きなアメジストドームもありましたね』

立派な式台玄関の正面に、キラキラと輝く紫の水晶______巨大なアメジストドームが、盛り塩と一緒に飾ってあった

「うん、魔除けになるんだって。ずっと昔からあるみたい」