硝子窓 (ページ9)

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話すら聞いてくれないページ9

「どしてじゃ、わりゃ関係なかろーが！」

「うーん、ちょっとのう。流石にそう言うわけには」

「部外者は口出さないで。引っ込んでて」

次々とにべもなく誘いを断られる

『話を聞いてくれない一族…』

最早口を開く前から話を聞いてもらえないとは

「そりゃそうでしょ。遺産を争うライバルなんだから」

分かっていたなら、早く教えて欲しかった

「とりあえず、今日は私はここに泊まるから。Aさんも泊まってって」

汐路は当然の流れの様に言うが、予定も想定もしていなかった成り行きである

『え！？いやいや、もう東京へ帰るので』

明日は日曜日だが、そもそも広島へは美術展だけが目的で来たのであって、他には特に見たいものも行きたい所もない

「帰りのチケットはまだ買ってないでしょ」

何故、"もう買ってあるの？"と言う疑問形ではなく、"まだ買ってないでしょ"という断定形なのか

『……どうしてそんなこと』

知っているのか訊こうとして、口をつぐんだ。何ゆえ汐路はしたり顔なのか。あまつさえ、口元にはうっすらとほくそ笑みのような

『あ！まさか……昨日、大学で今日までの期限の広島行きののぞみ、誰か要らないかって。知らない人なら安く買ったけど、あれ……』

「私が頼んで売ってもらった」

汐路は悪びれもせず、けろりとして言う。あの格安新幹線チケットは、この場に来させれる為の罠だった、と言うわけか

『恐ろしい……なんて恐ろしい』

思わず後退りした。そこまで入念に仕組まれたものだったとは_____人の運命を弄ぶ、悪魔の如き所業ではないか

広島に来た日が、偶々狩集家の遺言書を開示する日だったなんてあり得ない

「言ったでしょ、お金と命が掛かってるって」

『……』

思わず目を見開く。いっそ清々しいほど、自分の気持ちも事情もお構いなしなのか？