硝子窓 (ページ8)

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彼女の思いページ8

何とも曖昧な雰囲気のまま場は解散となり、親族が三々五々広間を出ていく

親達の最後に立ち上がったななえが、心配そうに汐路の顔を覗き込んだ

「大丈夫だよ」

汐路が言うと、ななえは小さく頷いて広間を出ていった

「これで分かったよね。バイトっていうのは、私のボディーガード兼、蔵の謎解き要員」

『……遺産、欲しいですか？』

汐路は、本当に遺産などに興味があるのだろうか

知り合って数時間しか経っていないけれど、人と争ってまでお金を手に入れたいと思うような子には思えない

山積みの札束よりも、むしろ山盛りのドーナツのほうに飛びつきそうな…

「自分ならいらない…でも母が…」

『…？』

「父が亡くなったから、母には何の権利も無い。嫁としてこき使われても一円も貰えない。母の為に、私は勝ちたい」

汐路の言葉にも表情にも、そしてその瞳にも固い決意が見て取れる

いわくありげな旧家の嫁。人一倍、周囲の親族にも気を遣っている様子だった。狩集ななえは、想像もつかないような肩身の狭い思いをしてきたのかもしれない

そして汐路は、ずっとそんな母親の姿を見て育ったのだろう

『じゃあ、死人が出ないように、まず相続人の皆さんでお茶飲んで話し合いませんか』