硝子窓 (ページ7)

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遺産相続ページ7

「確かに亡くなる方はいらっしゃった様ですが、全員事故や病気とはっきりしております」

二人の横から、車坂が言った

「そうだよね。警察はいつも調べないもんね。うちのパパ達が死んだ時もそうだった」

汐路は、初老の顧問弁護士の言葉に反発するような口振だ

「汐路！」

汐路の向かいに座っている濃紺のワンピースを着た中年女性が、やめなさいというように小さく首を振る

「本当のことでしょ、ママ」

汐路の母親、狩集ななえである。活発な娘と違って、控えめでおっとりした印象だ

「まだそんな事を。あれは事故だったんですよ」

「ガロちゃんは、面白がってた。"君の一族には闇がある。君を守りながら、覗き込んでみようかと思ってた"って」

汐路が呟くように、傍のAに言う

『つまり……狩集家遺産相続殺人事件……死人がどんどん出るやつですね』

「それでは、私達はこれで」

「失礼いたします」

　

役目を終えた車坂と真壁が、狩集一族に頭を下げて広間を出ていく

さぞや莫大であろう財産の行方は、結局狩集家の顧問弁護士と顧問税理士の手に委ねられる事になるらしい

『……あの二人は、おじいさんから相当信用されてたんですね』

車坂と真壁は、後ろ姿を見送りながら、Aは汐路に言った

「車坂家と真壁家は、明治時代に狩集家が一気に成長した頃から、ずっと一緒にやってきたんだって」