硝子窓 (ページ4)

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遺言ページ4

「マフラー巻くのって怖く無い？」

『え？』

「私、あなたみたいにマフラーをきっちり巻けない。ネックレスもつけられない。きっと首を絞められると思うから」

「…もう時間だ、さ、行くよ」

『えっ！？』

______まだ引き受けるとも言ってない

「これからおじいちゃんの遺言書が公開される！」

『え〜〜』

仕方なく走り出す。そもそもおじいちゃんって？遺言書って？全く話が見えないんですけど！！

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狩集家の本家は有形文化財に登録されてもおかしく無い様な、堂々たる門構えの旧家であった

板と真壁の屋根付きの高塀が延々と続いており、中に入らずとも広大な敷地だと分かる

汐路に促されるまま、両側に家紋入りの提灯が飾られた門を潜った

庭園を見渡せるくらい長い榑縁を歩き、たっぷり三十人は収容できようかと言う広間に辿り着く

その広間に、狩集家の親族が一堂に会していた

『…私、ここにいて大丈夫ですか？というかなんでいるんでしょう』

身を乗り出し、前に座っている汐路に小声でクレームをつける

赤の他人が、何ゆえ言えんのありそうな名家一族の遺言公開などという非公開の場に紛れ込んでいるのか

「では始めましょう。私は狩集家の顧問弁護士を務めております、車坂と申します。こちらは顧問税理士の真壁先生です」

向日葵の弁護士バッジをスーツの襟につけた白髪の車坂義
家、恰幅のいい角ばった顔の真壁軍司、共に七十代後半というところか

車坂が、紫色の正絹の帛紗の上に載せた遺言書を手に取った

「これより、先月お亡くなりになった狩集幸長氏のご遺言書を開示させていただきます」

沢山の供花に囲まれた床の間の祭壇に目をやった。白い布で覆われた、立派な三段式の祭壇だ

一番上の段の中央に、遺骨と位牌に挟まれたかっこうで遺影が置かれていた。最高ランクの戒名に相応しい和装の老人が、白木の額の中で気難しそうにこちらを睨んでいる

「あれ、私のおじいちゃん」

遺影を見ている私に気付いたのか、汐路が教えてくれる