硝子窓 (ページ16)

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他の遺産相続人候補ページ16

他の遺産相続人候補達ものんびり朝寝坊していたわけでは無い

新音は既に自分の蔵を調べ終え、雑草林を一人歩いていた

すると、ゆらが幸の手を引いて歩いたらいるのが見えた。何故か急ぎ足で蔵とは反対方向に歩いていくので、新音と同じく、もう蔵を開けたのだろう

「お、ゆら！おまえんとこ何が入っとった？」

振り向いたゆらは、気のせいか顔色が悪い

「言うわけないでしょ！レースもう始まってるんだから！」

目を吊り上げて新音をキッ、と睨みつける

「そがいな大声出さんでも。イライラすんなや」

「幸、じぃじのとこ行ってて。ママ、もう一度蔵に行ってくるから」

「ママもー」

「良いから行きなさい、ほら」

ゆらは幸を追いやる様に手で促し、自分だけ蔵の方へ引き返して行った

幸は家に向かってぴょんぴょ跳ねる様に歩いて行く。ふわふわの巻き毛をリボンで結んだツインテールといい、ちっちゃな垂れ耳の白ウサギの様だ

「幸ちゃん、幸ちゃん」

幸が足を止め、なに？というように顔だけ振り返る

「なあ、蔵の中入った？」

「……」

幸は固い表情で口を閉ざしている

「なにがあったか教えてくれん？」

愛想笑いに加えて精一杯の猫撫で声を出すが、意図に反して幸の警戒レベルは上昇したようだ

「お母さんには内緒で、よ？お菓子あげるけえ」

『こういうことやっちゃダメです』

「うぉっ！？」

仰け反った新音が、勢い余って尻餅をつく

『幸ちゃん、行っていいよ』

「ばいばい、"おねーちゃん"」

『うん、ばいばい』

帰り際Aに手を振り、幸はぴょんぴょんと跳ねて行ってしまった

「(Aさん気付いてないのかな)」

「(此奴、男じゃなかったけぇ？)」