硝子窓 (ページ13)

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宣戦布告ページ13

汐路の足元で植木鉢が音を立てて割れる

二人は驚いて立ち尽くした。もう少しで汐路の頭を直撃するところだった

「誰！？わざと落としたでしょ！」

上に向かって叫ぶなり、汐路がコンクリートと石積みの擁壁に造られた階段を駆け上がっていく

崖地の上は何もない空地で人影はなく、周囲を見回しても誰も見当たらない

「誰か知んないけど、こんな事でビビらないから！こっちも容赦しないからね！」

激昂して、辺りに響き渡るような大声を叫ぶ汐路

汐路は遺産相続争いの宣戦布告と受け取ったらしいが、どうもそう思えない

『……ホントにワザとですか？まともに当たったら大怪我ですよ』

「だから怖いって言ってるの。言ったでしょ。死人が出るって」

たった今恐ろしい目に遭ったばかりなのに、汐路は不吉なことを平然と口にする

屋根を見下ろす高台からは、狩集家の広大な敷地が一望できた

『すごい…これ全部狩集家の？』

主屋を中心に、離れや庭園などが一体となっている豪壮な屋敷構えである

「うん。あれが蔵だよ」

汐路が、池の向こうに見える雑草林の、そのまた向こうに点在する四つの蔵を指差す

「右から、理紀ちゃんがもらった明聡の蔵。新音の忠敬の蔵。ゆらちゃんの温恭の蔵。私の問難の蔵」

『……」

四つの蔵は遠目にも時代がかっていた。戦争でも倒れず、家屋敷は焼けたが、蔵の中のものは無事だったそうだ

「ずっと開かずの蔵だったの。誰も近寄よるなって言われてた。でも一回だけ、パパが出入りしているのを見たことがある」

『え……』

「すごくコソコソしてた。多分おじいちゃんに内緒で鍵を持ち出したんじゃないかな」