14 (5月1日) ページ14
聖夜君の部屋は思ったより広々としていた。
「ちょっと汚いけど適当に座って?」
「うん、ありがとう」
私は床に置いてあった座布団の上に座った。
「へぇ〜、きちんと座布団の上に座るんだ」
「えっ?あっ、うん、誰かの家に行った時だけだけど」
うそ、ほんとは聖夜君の部屋だから。
「そっか、あっ、飲み物麦茶で良いかな?これしか無くて」
「うん、全然いいよ!」
「じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言って聖夜君は部屋を後にした。
しばらくして、お盆にお茶をのせた聖夜君が戻ってきた。
「お待たせ〜、はい、麦茶」
「ありがとう。っていうかわざわざお盆使うの?」
「えっ、あっ、うん。なんかこれが安心するからさ」
「そうなんだ、なんか変わってるね」
「それ、ずっと前から言ってんじゃんか」
「そうだった」
そう言って2人で笑ってから、出された麦茶を飲み干した。
「……………………で、大事な話って何?」
「あっ、そうだった」
今日、私は聖夜君に大事な話があるから家来てくれないかなって誘われたの。
“8月××日
ねぇ、A、大事な話があるんだ。
Aには絶対知っててほしい事。
ここで言っても良いんだけど、やっぱり大事な事だから直接会って話したいんだ。
だから次は僕の家に来てほしい。
場所は僕達が初めて会った河川敷でどうかな?”
こんな内容だった。
聖夜君は私の方に向き直ると真剣な表情になった。
見ているこっちはドキドキしてくる。
「実はね………………」
聖夜君が重い口を開いた。
「僕、引っ越す事になったんだ」
「えっ…………」
声にならない声が私の口からこぼれ出る。
「親の仕事の都合なんだけどさ」
「どこに、引っ越すの?………」
私は恐る恐る聞いてみた。
「東京……………」
初めは聞き間違えなんじゃないのかなって思った。
だって、私達が住んでるの近畿だよ?
これが聞き間違えなら、
本当は京都だったら、引っ越しても簡単に会えるのに、
聖夜君は、
「僕、東京に引っ越す事になったから」
紛れもなく確かに東京と口にした。
しばらくは言葉が出て来なくて。
「………………遠くなるね……」
やっと出てきた言葉はこの一言だけ。
聖夜君は、何か付け加える事もなく、ただ一言、
「うん」
と返事をした。
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まありな(プロフ) - わさびさん» レス遅れてすみません(汗)コメントありがとうございます!次回作も読みたいと言って下さってとっても嬉しいです(^^)次回作ももしかしたらファンタジー系になるかも?と考えているまありなです。これからもよろしくお願いします! (2018年6月17日 16時) (レス) id: 861ad6280a (このIDを非表示/違反報告)
わさび(プロフ) - 完結しましたね!おめでとうございます!とっっても面白かったです(^-^)ファンタジー系の恋愛物語…珍しい設定なので引き込まれちゃいました!まありなさんのストーリーまだまだ読みたいので次も楽しみにしてます! (2018年6月17日 6時) (レス) id: ce8d2a8d7d (このIDを非表示/違反報告)
まありな(プロフ) - 鏡夜*スカーレットさん» ありがとうございます!最高だなんてそんな……まだまだです(笑)語彙力もおかしな文章を放り込んだりしてしまうのでもっと精進しないとなんて思います。これからも楽しんでいただける作品を作っていきたいと思っているのでよろしくお願いします! (2018年6月16日 16時) (レス) id: 861ad6280a (このIDを非表示/違反報告)
鏡夜*スカーレット(プロフ) - 完結おめでとうございます!なんか……最高でした(語彙力)次作も楽しみにしてます。 (2018年6月16日 16時) (レス) id: dd46af3844 (このIDを非表示/違反報告)
まありな(プロフ) - 否さん» 大変長らくお待たせいたしました。先ほど一話分更新させて頂きましたのでご覧になって頂けたらと思います。これからもよろしくお願いします! (2018年6月13日 20時) (レス) id: 69e2d78fba (このIDを非表示/違反報告)
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