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恐怖 ページ15

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 留めておいた涙がまた溢れそうだった。昔から、優しくされると何だか申し訳なくて、涙が溢れて来る。状況が違うとはいえどここは学校。学校で泣くなど小学生のようで恥ずかしい、と少女は無理矢理堪えていた。
 扉が再度開き、彼が出てくる。何度見ても肌は青白いくらいで少し心配になる。先生、少し痩せたんじゃないか、と少女はぼんやりと考えていた。彼は新品らしき藍色のキャンパスノートを手にしていた。先程の栗色のノートはもう行方が分からない。ポケットからシンプルなシャープペンシルを取り出し、そのノートと一緒にして柊はすっと無言で少女に差し出した。
「えっと……?」
「Aに頼みたいことがある」
いつになく真剣な表情だ。真っ直ぐに何かを見据えているような、何でも見透かしそうな、不思議な瞳。その両の瞳が少女を捉えていた。これは冗談なんかじゃない、と少女はごくりと唾を飲んだ。この目をつい最近、見たばかりだ。人質になってもらう、と告げた目と同じ。それならばきっと、先生にとって大事で、本気の話をするのだと少女は悟った。
「これに、手記として今日からの記録をしてくれないか」
 ぽかんとした表情を浮かべてしまった。それ以外に無かった。開いた口が塞がらない、ということだろう。畢竟、少女は驚いていた。
「でも、そんな」
「大丈夫だ」
「いやあの」
「お前の度胸を見込んで」
少女が何かを反論するのを断ち切ってまで彼は告げる。まだ少女はノートを受け取らない。立てこもり、というこの状態でさえまだ信じられていないのに、そんな心境で手記として何を語れというのだ。受け取ったときは、了解を示すとき。まだ、ノートは受け取れない。興味がないわけではなかった。寧ろ、彼のことを記しておくのならば喜んで引き受けたいところだった。けれど、何故だか心が許さない。それを少女は感じた。きっと何か、何かが引っかかっているのだ。その感情はなんだ、必死に記憶のひだを辿って着いたのは、恐怖という感情だった。
「こわい」
一言、そう漏らした。全てを知ってしまうのが、真相を知るのが、こわい。自分の所為だったら、と考えればそれは当たり前のようでもあるが、少女は他にも恐怖を感じていた。
「文字に表すことで、それを、真実を受け止めなければならないのが、こわい」
 はぁ、とため息をついて柊は優しい目で少女を見つめた。

決意→←活力


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鑑 涙栖(プロフ) - ゆうさん» 閲覧、コメントありがとうございます! ドラマ沿いにすると夢主の台詞をどう会話に突っ込んでいいか分からないのでこのような形になっています(笑)風変わりなものを書いていると思いますが、こうしてコメントをいただけるととても嬉しいです (2019年2月15日 16時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 初めてコメントします。ドラマ沿いの小説が多いなか、少し違った視点、角度からの小説だったので新鮮でした。 (2019年2月14日 23時) (レス) id: b0c7457ca7 (このIDを非表示/違反報告)
鑑 涙栖(プロフ) - のあさん» 閲覧、コメントありがとうございます。陳腐だなんて滅相もない、その言葉だけで私は随分救われてます。ありがとうございます(笑)偏人三面相のほうも読んでくださってるんですか……!あちらも更新頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年2月3日 17時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 、初めまして。本当に本を手に取って読んでいるような感覚でした。陳腐な言葉ですが、とても面白かったかったです。素敵な小説をありがとございました。偏人三面相の方も楽しみにしています! (2019年2月3日 17時) (レス) id: 30887f6f4e (このIDを非表示/違反報告)
鑑 泪栖(プロフ) - りょうさん» 楽しんでいただけたようで幸いです! コメントもありがとうございました! 作中作の構成や、冒頭部分を最後にもう一度持ってくるのが好きなのでこのような構成になりました(笑) (2019年2月1日 16時) (レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鑑涙栖 | 作成日時:2019年1月24日 21時

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