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「A〜、来たで…って、あれ?」

何日か仕事がバタバタしてやっと時間を作れたその日、Aは部屋にいなかった。車椅子がないのでどこかへ行ったんだろう。辺りを歩いているとナースさんが今はリハビリ中ですよと教えてくれた。


リハビリステーションを少し覗いてみると、床に座り込むAを見つけた。声をかけて中に入ろうと思ったけどAは俯いて泣いている。床に足が貼り付けられたかのように、俺はその場から動くことが出来なかった。Aが泣いている姿を見るのはそれが初めてだった。


数分後、目を真っ赤にさせて何も無かったかのようにAは帰ってきた。

「あ、太陽来てたんだ。ごめんね?部屋に誰もいなくて。」

無理に笑うAに、いてもたってもいられなくなる。思わず立ち上がるとAを抱きしめた。

「A、あんま無理したらあかんよ…」
「無理なんてしてないよ?…どうしたの?」
「…もっと俺を頼ってや。」
「もう、ホントに大丈夫だよ?」
「せやから!」

Aから聞きたい言葉はそれじゃない。そう思ったら声を荒らげてしまった。今まで1度もそんなことはしたこと無かったのに。俺が咄嗟にごめんと言う前にAはビクっと肩を震わせると俺から離れた。

「今日の太陽、なんか変だよ。」
「俺、そんな頼りない?」
「そんなことないよ、でも」
「なら、頼ってほしい…」
「っ…そんなの無理だよ」
「何でなん?俺が…」
「太陽なんかに、太陽なんかにわかるわけないじゃん!歩けない苦しみとか、辛さとか、わかるわけないじゃん!…それに、そんな姿みっともなくて、見せられない……」

そう言われて絶句してしまった。今にも泣きそうな顔で、震える声で、今までいっぱい我慢してきたんだなってわかる。自分がその中の支えになれてなかったことに、思考が停止した。

「もう、帰って。」
「嫌や。」
「帰ってよ!!もう……もう、来ないで!!」

叫び声に近いような声を上げて俺を突き放した。これ以上ここに俺がいたらAが壊れてしまうような気がして、顔も見ずに部屋を後にした。



自分の家に帰ってくると緊張が解けたのか自然と涙が出てきた。A、そんなに悩んでたんやな、その中で元気な部分を俺に見せたくて無理してたんやなって思う。でもその中で、Aの支えになってあげたいことは何一つ変わってなかった。

明日、きちんと伝えよう。

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設定タグ:超特急 , 短編   
作品ジャンル:恋愛
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なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時

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