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「A!久しぶりやな〜」

太陽と一緒に吉野くんが相変わらずの笑顔でやってくる。

「吉野くん、お久しぶり。元気だった?」
「当たり前やんか。」
「よかった。太陽からよく話は聞いてるよ」
「え、何言われてんねやろな〜」
「ちょ、何ニヤついてんねん!俺変なこと言うとらんよ!」
「え〜、そうかな?吉野くんにバラしちゃおっかなぁ?」
「太陽なんて言うてたん、知りたいわぁ〜」
「ほんま何も言っとらんて!」

あひゃひゃ、と吉野くんの快活な笑い声が病室に響く。こうやって会話をすると太陽と吉野くんは兄弟みたいだなぁって思う。同じ関西弁だし。

それから他愛もない話をして、吉野くんは大学があるので太陽と見送った。



「もう、晃一に変なこと言わんといてや〜」
「太陽がおもしろくて、つい」
「そういうこと言う子はもう知らんな〜」

そういってぷいっとそっぽを向いてしまう。太陽は昔から優しいから本気で怒った姿を見たことがない。怒るって言ってもそっぽを向くとか、そういうのだけでそれがまた愛おしい。

こういう時の太陽の機嫌の直し方は、わたしがよく知っている。ベッドから手を伸ばすと太陽の手を両手で包む。

「たーかーしー?こっち向いて……?」

でも今日の太陽はご立腹なのかこっちを向いてくれない。珍しいなぁ。そのまま太陽に抱きつくと太陽の肩に顔をのせて

「機嫌なおして?ごめんね?」

って聞いてみる。そのまま背中をトントンと優しく叩いているとわたしの背中に太陽の腕が回る。ベッドから落ちない程度に抱き寄せられると

「もう、そんなん反則やろ……」

とどこか嬉しそうな太陽の声が聞こえた。その声に自然と頬がゆるむ。こういう時に太陽のこと、すきだなぁってしみじみ感じる。ぎゅっと抱きしめると答えるように抱き締め返してくれる。幸せだなぁ。


太陽が帰ってしまったあとのこの部屋は頭がおかしくなりそうなほど静かだ。さっきまで太陽が座ってた椅子や、せめてもの彩にと活けてある花に寂しさすら覚える。この足が自由に動いて、太陽を追いかけられたらなぁ。平然と今まで歩いていたけど、リハビリを始めて歩くことの大変さを思い知らされた。足が全く歩き方を忘れていて、何度も床に倒れ込んだ。立つことも支えがなければできない自分がすごく惨めに感じる。せめて太陽が頑張ってる姿を歩いて見に行きたいと思ったけど、間に合うんだろうか。

年末のツアーには、間に合いますようにと毎晩祈りながら眠るのだった。

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設定タグ:超特急 , 短編   
作品ジャンル:恋愛
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なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時

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