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「あんの〜、稜くん。」

ゲームをしている彼の背中に向かって言う。つい先日もらった書類に視線を落としながら返事が返ってくるのを待つけど、どうやら彼は目の前のゲームに熱中していた。せっかく真似してみたのに。

「稜くん、話があるんだけど。」
「えっこわ…なに?」

びっくりしたように目を見開いてこちらに振り向いた。手元にはしっかりとスマホが握られていて、静かな部屋にそのBGMだけが鳴っていた。

「えっとですね、来週から…出張がありまして」
「来週から」
「大阪に、2週間ほど」
「出張」
「だから、その…ごめんね?」
「大阪に」

私が言ったことを淡々と繰り返す彼の瞳には光が宿っていない。稜雅はそのままブツブツと来週、出張、大阪、と何度か繰り返したあと、やっと言葉の理解が出来たのかはぁ!?と間抜けな声を上げた。

「次の部署異動の関係で、1回行かないといけないみたいで」
「えっ待ってほしいんだけど、俺どうやって生きてけばいいの」
「稜ちゃん家事できないもんね」
「出来ないんじゃなくてやらないだけだよオイ」

そう言いながらも目は泳いでいる。壁にかかっているカレンダーをわざわざ外して持ってくると、出発する日取り、帰る日取りを計算し始める。そして数分ローテーブルの周りをぐるぐると歩いたあといいことを思いついた!と言わんばかりのドヤ顔でこちらを向いた。

「わかった、俺もついてけばいいんだよ。」
「…え?」
「いやほら、俺が着いてけば万事解決ってな?」
「稜ちゃん、観念して受け入れてほしいんだけど…」
「っぁああ!なんで!?」
「稜ちゃんにはティーがいるでしょ?ほら、おいで〜」

足元に擦り寄ってきたティアラを抱きかかえると膝の上に座らせる。このふわふわの天使とも2週間お別れなのかと思うと寂しいなぁ。



その後なんとかごねる稜雅を宥め、こうして私の出張準備が始まったのである。この前テレビで普通に家事できないって公言していたから心配ではあるんだけど、本人曰くやらないだけで出来ないわけじゃないからお任せすることにした。

「じゃ、行ってくるね。」
「なぁほんとに…?」
「早くしないと新幹線遅れちゃう。」
「はぁ、ティアラ〜Aが冷たい…」
「ほらしっかりしてよ、お仕事ちゃんと頑張ってね?」
「おう……」

元気なさそうに返事をする稜雅に苦笑しながらも手を広げて待ってみる。抱えていたティアラを離すとのしかかるように抱きしめられる。

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設定タグ:超特急 , 短編   
作品ジャンル:恋愛
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なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時

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