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「あんの、昨日……なんですけど」

ちょっと切り出しづらそうに視線をティアラちゃんに逸らして話し出す。反射的にビクッと震えてしまった。男の人が何か言い出そうとしたけど遮るようにして言う。

「あの、このまえ……うちの犬が死んじゃって。大好きだったんです。でもなんか実感がなくて、でも何感じなくて…」

また視界がぼやける。上から落ちてくる涙にティアラちゃんがびっくりしたように私を見上げた。男の人はそっか、といいながらハンカチを差し出してくれる。申し訳ないと断ったけどいいから、と言われありがたく借りることにした。

「受け入れられなくて、当然だと思うし…その、無理しなくていいと思います」

優しい笑顔を見たらもう何も言えなくなってしまった。何度も頷きながら涙を拭っているとティアラちゃんがわたしの手を舐める。思わず微笑んでティアラちゃんを撫でていた。ちらりと男の人の方を見ると何故か真顔で固まっていた。そういえば、名前知らないな。

「あの、お礼もしたいし…名前聞いてもいいですか?」
「えっ、ティアラです。」
「えっと、わんちゃんの方じゃなくて……ふふっ」
「あ、俺!?俺ですか?…船津稜雅です……」

顔を真っ赤にさせてめっちゃ恥かしい…と呟く船津さんを見てどうしても笑いをこらえることが出来なかった。

「ちょ、ホント笑いすぎだから、めっちゃ恥ずかしいし……あんの、俺も名前聞いていいですか」
「ふふっ…私は山橋Aです。」

そう言うとティアラちゃんを抱きかかえ立ち上がった。それに合わせるように船津さんも立ち上がる。

「えっと…明日もお散歩してますか?」
「そのつもり、です。」
「じゃあまた明日」

そう言ってティアラちゃんを船津さんに渡す。そうすると笑顔で船津さんもまた明日、と返してくれる。そこでお互い別れると軽い足取りで歩き出すことが出来た。今日のモーニングは美味しく食べられそうだ。そうだ、お礼に今度一緒にモーニングを誘ってみようかなぁ、なんて考える。船津さんの笑顔を思い出して明日はちょっとオシャレしていこうかな、なんて思ったりもした。恋をしたわけじゃないのに何故か浮かれてる私がいる。にやけそうになるのを我慢しながらカフェに向かうのだった。


これが恋だと気づいて、船津さんから稜雅さんに、稜雅さんから稜雅に呼び方が変わるのはまだ先のお話
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設定タグ:超特急 , 短編   
作品ジャンル:恋愛
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なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時

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