検索窓
今日:3 hit、昨日:15 hit、合計:44,689 hit

.04_01 ページ24

.01



「……たくや、」

仕事終わりに携帯をみれば、普通には考えられないほどの不在着信。メッセージも山のようにきている。またか、と思いつつその原因に電話をかければ今にも消え入りそうな声で俺の名前を呼んだ。

「今どこ、迎えに行くから。」
「もうたくやの家の前…エントランスにいる」
「…わかった。すぐ帰るから待ってて。」

電話越しにため息をつきそうになったけど我慢した。最寄りからは歩いて帰るのが日課だけど、Aをあまり待たせるわけにはいかないのでタクシーを使うことにした。行き先を伝えると走り出す車に明日がオフで良かったと思った。



普通の家庭って一体なんだろうな、とAを見る度に思う。Aの母親は平然とAに手を上げる。実際に見た訳では無いが、彼女が俺にこんなにも不在着信をいれたり、メッセージを狂ったように送るのはそのせいだ。

「A」
「……たくや」
「ほら、行くぞ」

エントランスのソファでウトウトしていたAを起こすと部屋に向かう。泣いたのか目の周りが赤くなってるし、頬も右側だけ腫れている。冷やして、明日には治るかなと考えながら歩いているとAが服の裾をきゅっと握る。Aが服の裾を握る時は、本当にお手上げの時だけだ。俺より10センチ以上小さい彼女が、一段と小さく見えた。裾を握る手を解かせると手を繋いで歩いていく。




「たくや、」
「大丈夫だって、ほら。頑張ったな。」
「も、やだよ…わたし、わたし……」

部屋につきリビングに向かおうとすると家に入ったことに安心したAが俺の背中に抱きついてきた。声も震えていて、今にも消えそうな声で言う。手をほどかせるとAと向かい合い抱きしめる。頭を撫でていると着ている服の間からアザがいくつも見えた。

「ほら、靴脱いで。リビング行こ?」
「……うん」
「ん、ほら。」

Aが家にあがると手を繋いでリビングまで移動していく。ソファに座って待っていてもらう。温かいココアを2人ぶん作って持っていくと嬉しそうにAがはにかんだ。

「拓弥って、ココアだけは美味しく作れるよね」
「おい、だけはってなんだよ」
「だって料理も危なっかしいし、一人暮らしのたくちゃんが心配だな〜」
「うるせ、料理は食えればいんだよ」
「んふふ、Aちゃんが作ってあげますよ〜」

そう言ってキッチンに移動していくA。キッチンから何これ、すくなっ!とさっきとは違って元気そうな声が聞こえた。

.04_02→←.03_04



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
136人がお気に入り
設定タグ:超特急 , 短編   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

なるせ(プロフ) - すけさん» ありがとうございます(;;)励みになります! (2018年10月4日 22時) (レス) id: a45752a8c7 (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 全部面白いです!! 更新待ってます!! (2018年10月3日 21時) (レス) id: 315a3c6654 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なるせ | 作成日時:2018年8月25日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。