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｢いい天気だ。｣
雲ひとつない空はどこまでも澄み切っている。
青い空も、眩しい太陽も
庭に咲き乱れる花々も
すべてが今日という日を祝福しているかのようだ。
ようやく、この日を迎えることができた……
王子が、王子でないとわかった時は
一体どうなることかと思ったが
入れ替わったのが中々に物分りの良い男で助かった。
…というよりは『御しやすい』という方がしっくりくるか？
｢うわっ！つめてー！！
マジかよ！？マジでこんなんにはいんの？！｣
。。。。この男…智は、姿かたちこそ王子にソックリだが
どうも中身が幼いというかなんというか…
本物の王子とは似ても似つかない。
｢ちょっ！おまっ！…ちょ、まてって！
おわっ！つめてっ！！
いきなりかけんなっ！！おいっ！｣
。。。。今も、浄めの沐浴の泉の水が冷たいだなんだと
侍者相手にひとりで大騒ぎしている。
いつもの王子なら黙って粛々と浴びるのに……
｢…お前たち、もう下がっていい。
あとは私が代わろう。｣
｢ですが、宰相様にこのような……｣
｢かまわん。
今日の王子は少し気が立っておいでのようだからな。
お前たちの手には負えそうもないだろう。｣
俺がそういうと、神妙そうな顔をしつつも
どこかホッとしたように下がっていく侍者たち。
まあそうだろう。
いつもとはまるで別人みたいな王子を相手に
戸惑わない方がおかしい。
それに実際別人なんだから、至極当然の反応だ。
泉のほとりの岩に呆けたように座り込む智に声をかける。
｢王子、困ります。｣
｢……何がだよ？｣
｢そのように身も蓋もなく騒がれては
王子が別人だと悟られてしまうではありませんか。｣
｢だってしょうがねーだろ？
メッチャつめてーんだぞ？この水！
お前入ったことねーのかよ？｣
｢もちろん、ございません。
この泉に入ることができるのは王家の方のみですので。｣
｢なんだよ！ねーのかよ！
知らねーのにエラソーにいうなよ！
冷たすぎてイテーんだぞ！
こんなん入ったらマジでおれ死ぬわ！｣
｢……では仕方ありません。
最後の手段を使わせていただきます。｣
そういって
徐に智の投げ出された足の間に立った。
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